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妻とケンカして、仲直りした話

278 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 02:11:52.36 ID:yAOhGlis
【夫視点】

俺は幸せ者だ。
朝の支度をする智美の後ろ姿を見て、つくづくそう思う。
我が妻、智美の今日のいでたちはいつも通りのフォーマル。
濃紺のジャケットを羽織っていてもそのウエストはまるでモデルみたく引き締まっているのがよく分かるし、
そのくせタイトスカートに包まれたお尻は女性らしさに満ちた魅惑的な曲線を描いている。
それが智美の機敏な動きにあわせてひょこひょこと揺れるのを見せられてはたまらない。
毎朝後ろから襲いかかってそれを撫で回したくなる衝動を堪えるのに四苦八苦させられる。
本来なら、俺達は夫婦なんだから堪える必要なんてないはずないのだけど……




279 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 02:13:01.86 ID:yAOhGlis
「伸吾、目がスケベになってる」
肩越しに振り返って、智美はぴしゃりと言い放つ。
うっすらと茶色がかったミディアムヘアがさらりと揺れる。
朝から愛しい妻を不機嫌にさせたくない俺としては、素直に「ごめん」と謝るしかない。

彼女曰く「仕事とプライベートを混同するのは不健康」だそうで、
いったんフォーマルスーツに身を包んだら一切そういうことはしない。
そういう誓いを結婚当初に立てさせられた。
どうやら彼女の中では「たとえ家に居てもスーツを着込んだらもう仕事が始まっている」という意識らしい。
1回だけそれを破って後ろから抱きついてみたら、かなり本気で怒られた。
結婚から2年と少し。
未だに視線だけで怒られるあたり、
どうやら智美はこの誓いを一生続けるつもりのようだ。
一度でいいからタイトスカートの上からお尻を撫で回してみたい。
そしてスカートの中に手を突っ込んで、黒タイツに包まれたふとももを思いっきりまさぐってみたい。
男なら誰しもが抱く衝動だと思うんだけど、どうやらその欲求が満たされることは永遠になさそうだ。


280 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 02:13:25.79 ID:yAOhGlis
「いただきます」

朝の食卓。
2人とも忙しいので、朝はいつも簡単だ。
トーストと夕飯の残りもののサラダ、それとコーヒー。
そんなありふれた朝の食事も、智美と2人でテーブルを挟んで食べるのならば、
とたんに何物にも代えがたいご馳走と化す。
大げさなようだけど、彼女の顔を眺めていると本気でそう思えてくる。
スーツ姿がよく似合う美人系の顔立ち。
笑うとすごく柔らかい印象になるんだけど、
無表情で居るときつそうに見られることも多いらしい。
実際俺も大学で知り合ったばかりの頃はどことなく近付きがたいものを感じていた。
高嶺の花というか、どうせ俺なんかじゃダメだろうと思わせる雰囲気が当時の智美には確かにあった。


281 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 02:13:53.99 ID:yAOhGlis
「なによ、じっと見て」
俺の視線に気がついた智美が無表情のまま言ってくる。
昔はこんなことにもいちいち慌てたりしたけど、別に怒っているわけじゃないと今なら分かる。
「いや、綺麗だなと思って」
「……ばか。いい加減に飽きないの?」
「飽きないな。ちっとも」
「もう……早く食べないと遅刻するわよ」
彼女はくすぐったそうに笑う。そんな一つ一つの仕草がたまらなく愛おしい。
こんなふうに根気よく智美を口説き続けた末に今の生活があるわけだ。
途中で何度も挫折しそうになったけど、諦めなくてよかったと心から思う。

付き合い始めてから分かったことだけど、なんと智美にとって俺が初めての彼氏だったらしい。
初デートもファーストキスも初体験も何から何まで俺が奪って、
これからも智美の魅力を独り占めし続ける。
そう思うといつも優越感に浸ってしまう。
今のところ、スーツ姿でエッチさせてくれないことを除けば結婚生活に何の不満もない。
そろそろ子供を作ってもいいかなとは思うけど、智美は「今は仕事を休みたくない」と言うので先送りにしている。
急ぐ必要はどこにも無い。
これから先もずっとこれを続けていくために、と思えば仕事にも張り合いがでるというのだ。


282 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 02:14:19.47 ID:yAOhGlis
「それじゃあ行ってきます。今日はそんなに遅くならないと思う」
「いってらっしゃい。私もいつも通りに帰ってこられると思うわ」

出かける時間は俺のほうが少し早い。
いつも通り今夜の予定を言い合って、玄関先で軽く唇を重ねる。
仕事とプライベートの線引きにこだわる智美だけど、これだけは許してくれている。
彼女曰く「だって伸吾ったら、キスしてあげないと捨てられた子犬みたいな目をするんだもの」だそうな。
情けない男と言われているようで複雑だが、そのおかげでいってらっしゃいのキスをうけられるんだったら安いものだ。
足取りも軽く、俺はいつものルートで駅へと向かった。



283 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 02:14:40.26 ID:yAOhGlis
【妻視点】

伸吾を見送ってから10分ほど経って、戸締まりを確認してからマンションのガレージへと向かう。
歩きながら、気付けば指先で唇に触れている。キスの名残を惜しむみたいに。
(……ふふ)
その感触を思い出すだけで、温かいものが心に満ちていく。
本当に、自分でも呆れるくらいに伸吾のことが好きだ。
ほんの5,6年ほど前までは自分がこんなふうになるなんて想像も出来なかった。


284 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 02:15:03.35 ID:yAOhGlis
伸吾と出会う前の私は、ずっとコンプレックスを抱えていた。
そんなつもりはないのに、無表情で居るだけでみんなに不機嫌だと思われてしまう。
男は寄ってこないし、女友達ともそれが原因で険悪になってしまったこともある。
でも伸吾だけは違った。
彼は「君の笑った顔が好き」だとか、そんなありふれた言葉は使わなかった。
ただ「君の全てが好きだ」と言ってくれた。
無表情の私も、コンプレックスを抱えた私も、みんなひっくるめて愛すると言ってくれた。
あの告白を受けた瞬間に、私の一生は決まってしまったんだと思う。
少し自分が嫌いになっていた私を変えてくれた彼に、一生ついて行く。
それが私の幸せだ。


285 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 02:15:17.64 ID:yAOhGlis
恋人だった頃と同じように今もお互いを名前で呼び合っているのも、私が望んでのことだ。
夫婦という形式としてじゃなくて、お互いを愛し合っているから一緒に居るんだといつも実感したいから。
子作りをまだしていないのだって、本当の理由は伸吾に言っているのとは別にある。
私はまだまだ彼と二人っきりの時間を過ごしたいのだ。
子供は居たら居たできっとかわいいのだろうし、別に2人の邪魔にはならないのかもしれない。
でも今はまだ彼との時間を大切にしたいと思う。
朝の情事を避けているのだって――
こんなこと、恥ずかしくて一生言えないだろうけど――
本当は仕事とプライベートの線引きなんてことにこだわっているわけじゃない。
伸吾に求められたら私はいつだって全力で応えてしまうと分かっているから。
仕事なんて放り出して、いつまでも彼の腕に抱かれていたくなってしまうから。
歯止めをかけないといけないのは、実のところ私のほうなのだ。


286 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 02:15:44.67 ID:yAOhGlis
なんて、とりとめのないことを考えながら車を走らせているうちに会社へと到着する。
車を降りて、すれ違う人と挨拶しながらエレベーターへ。
向かうは最上階、社長室だ。
当初は何の変哲もない事務職として入社したはずが、入社二年目にしてまさかの大抜擢。
今では社長秘書なんてものをやっている。
正直柄じゃないのだけど、社長直々に請われたのでは断るわけにもいかない。

社長室の前に立ち、手鏡で身だしなみをチェックしてから静かにドアをノックする。

「失礼します」
ドアを開くと、今日も社長の姿は既にデスクにあった。
いわゆる“重役出勤”というものはこの人には当てはまらない。
「おはようございます、トモミ」
そう言って私を出迎えるのは、桐谷啓治社長。38歳にして従業員数500を超えるこのIT企業のれっきとしたトップだ。
名前は日本人そのものだがドイツ人と日本人のハーフで、
15年前にこの会社を興す前まではドイツと日本を行ったり来たりの生活だったのだとか。
私を下の名前で呼ぶのも特別馴れ馴れしくされているわけではなくて、その頃の習慣によるものらしい。
実際さほど嫌な感じはしないので気にしないことにしている。


287 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 02:16:01.02 ID:yAOhGlis
「おはようございます」と返しながら、いつもと変わらぬ社長の姿を目に映す。
一目で白人の血が入っていると分かる白い肌、薄いブラウンの瞳。
何よりハーフ特有の小顔に、これが「美形」の見本だと言わんばかりの整った造作。
そこに加えて決して偉ぶらない態度、丁寧な物腰、
さらにいつも人当たりの良い笑顔を浮かべているのだから、女性社員に騒ぐなと言うほうが無理というものだ。
私から見ても、確かに美形ではあると思う。伸吾が居るからそれだけで胸が騒いだりはしないけれど。


288 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 02:16:30.12 ID:yAOhGlis
そういう立場にある人の宿命として、この人もまたいろいろな噂話の対象になっている。
曰く、この容姿を利用して取引先の女性役員に取り入っているだとか。
気に入った女性社員を次々とテゴメにしているだとか。
それが何かしら根拠のある噂なのか、女性社員たちの願望から来る妄想なのかは定かではない。
私が社長秘書になると決まったときなんて大変だった。
「テゴメにされないようにね、智美」
何人の人にそう言われたか分からない。
そして決まって、言葉とは裏腹に彼女らの顔には「テゴメにされてこい」と書いてあるのだ。
本当に嫌気がさしてきたのをよく覚えている。
そもそも私が来るまでは、どこからか引き抜いてきたという定年間近の男性が秘書をやっていたのだ。
秘書の仕事のノウハウもその人に手ほどきしてもらった。
その人が定年退職した今は私が1人で秘書業務をこなしているが、
そうするようになってからの1年と少しの間にも何かしらのアプローチを受けたことは一度も無い。
きっとあれは単なる下世話な噂話だったのだろうと私の中で結論づけている。


289 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 02:16:52.77 ID:yAOhGlis
いつものようにコーヒーを淹れて、今日のスケジュールを確認する。
会議やら取り引きやらで今日も社長のスケジュールはいっぱいいっぱいだ。
これにまた突発的なトラブルなどがあれば緊急の会議などが入るわけで。
本当によく倒れないものだと感心する。

一通りスケジュールの確認が終わると、社長はにっこりと笑っていつもの台詞を言った。
「今日も綺麗だね、トモミ。今日も1日よろしくお願いします」
「ありがとうございます。では、失礼します」
一礼してから社長室をあとにして、秘書室へと向かう。これから書類の作成やらいろいろな事務仕事が待っている。

「綺麗だね」と言われたとき、私はきっといつもの“不機嫌”な無表情だったと思う。
この間まで一緒に働いていた先輩秘書にはよく言われたものだ。
「社長のあれは君に気持ちよく働いてもらうために言ってるんだ。
 大げさに喜べとはいわないが、せめてニコリとくらいはしたらどうだね」
そう言われても、伸吾以外の人にああ言われて、
たとえ演技でも喜んでみせるというのは裏切りだと思う。
だから出来ないと正直に答えたらもうそれ以上は何も言われなくなった。
「君がそういう人だから社長も君を秘書に選んだのかもしれないな」
なんてことも言われたけど、意味はよく分からない。

この日は特にトラブルもなく、平穏に1日が終わった。
早く帰って伸吾の顔が見たい。



290 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 02:17:06.41 ID:yAOhGlis
【夫視点】

仕事が終わって、家でのひととき。
この歳で親父臭いかもしれないけど、このために生きてると実感できるひとときだ。
今日は俺のほうが早かったので晩ご飯は俺が作った。
大したものは作れないけど、智美は「おいしい」と言って食べてくれる。
夕飯が済んだ後はテレビを見ながらゆったりとくつろいで、それぞれ風呂を済ませてから寝室へ入る。
そうして始まる夜の営み。
結婚してから2年になるけど、何かよっぽど体調が悪いだとかの理由があるとき以外は毎晩欠かしたことはない。
「電気、消してよ……」
俺の粘りに対する、いつもの台詞。
恥ずかしがりの智美は、明かりを全部消してからじゃないとエッチさせてくれない。
一緒に風呂に入ることもあるし、朝の着替えなんかは俺の見てるところでやってるんだけど、
それとこれとは別問題なのだとか。
そういうところもかわいいと思う。
少し残念ではあるけど、智美に嫌な思いはさせたくないので素直に従う。
今日もゴムはしっかりつけた。
親父とお袋に初孫の顔を見せる日はもう少し先になりそうだ。



291 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 02:18:28.43 ID:yAOhGlis
ひとまず以上です。
誤字脱字などがあったらすみません。

こんなふうに視点を交互に入れ替えながら進めていく予定ですが、
後半になると段々と夫の存在が薄くなってしまうと思います。
それでもよければ引き続きご覧下さい。
では、また明日以降に



296 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:15:02.43 ID:yAOhGlis
【夫視点】

次の日。
朝礼が終わってすぐに課長のところへ呼び出された。
「……出張、ですか? 明日から?」
それも1日ではなく、二泊三日だという。
今日が水曜だから木、金と向こうに泊まって土曜に帰ってくることになる。
まさに青天の霹靂だった。
「すまんな、急で。
 お前のところもまだ新婚だし、出来れば気を遣ってやりたいところなんだが……」
人のいい中間管理職の課長は、申し訳なさそうに顔をしかめている。
そんなのを見せられると何も言えなくなってしまう。
「何か特別な用事があるなら他に回すこともできるが、どうする?」
「……いえ、特には」
智美との時間はいつも特別です、なんて言えるはずもなく。
しがないサラリーマンのサガとして、上からの命令には逆らえない俺だった。



297 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:15:16.92 ID:yAOhGlis
【妻視点】

「え、出張?」
夜の食卓でいきなり伸吾がそんなことを言い出したので、思わず驚いてしまった。
「ごめん、急に言われてさ……明日から土曜まで家をあけることになったよ」
「そんな……」
あまりにも急なことだったので、とっさに言葉が出てこなかった。
明日も明後日もこうして伸吾と夜の時間を過ごすものだとばかり思っていたのに。
「帰りは土曜だったわね。何時くらいになりそうなの?」
「多分いつもと同じか……もしかするとそれより遅くなるかもしれない」
伸吾は見るからに肩を落としてすっかりしょげている。
一時でも伸吾と離れるのはひどく寂しいけど、この人も同じ気持ちで居てくれるのだと思うと少し嬉しい。
そうだ、と思い直す。
こんなとき良き妻がすべきことは、ワガママを言って夫を困らせることではないはずだ。
「そう。仕事だものね。しょうがないわ」
「……ごめん。ありがとう」
「いいのよ。さあ、それなら早くご飯を済ませて荷物を準備しなきゃ」
意図的に明るい声を出して、気持ちとは反対のことを言う。
明日からしばらく離れることになるなら、今夜はゆっくりと2人の時間を過ごしたいのだけど――
それは単なる私のワガママだ。
そんなことで伸吾を困らせてはいけない。



298 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:15:42.32 ID:yAOhGlis
【夫視点】

「ふう……」
夜のお勤めが終わって、ごろんとベッドに寝転がる。
何度抱いても智美の体は最高だ。
これから二晩もこれを味わうことが出来ないのだと思うと、ひどい絶望に見舞われる。
「……ねえ」
ふと、右腕が柔らかな感触に包まれた。
いつもならコトが済んだらすぐに智美は身なりを整えてしまうのに、今夜はまだ裸のままだった。
さほど大きくはないけど形のいいおっぱいがじかに俺の右腕を挟んでいる。
さっき出したばかりなのに、また股間が熱くなってしまいそうだ。
「どうしたの? もしかして、もう一回?」
期待をこめて訊くと、智美は恥ずかしそうに顔をうつむけた。
もしかすると頷いたつもりなのかもしれないけど、動きが小さすぎてよく分からない。
ならいっそ、と都合のいいように解釈することにして、おもむろに唇を重ねる。
「んっ……」
俯いていた顔を上げて、智美はそれに答えてくれる。
舌を絡ませ合いながら、愛おしいその体を再び抱き寄せた。
一旦萎えていた股間のものはもう完全に回復している。


299 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:15:57.42 ID:yAOhGlis
「あの……」
俺に組み敷かれながら、智美は控えめにこんなことを言ってきた。
「伸吾の好きにしていいから」
「ん? 好きに、って? いつも好きなようにやってるけど……」
「そうじゃなくて……電気、つけたいならつけていいから……
 伸吾のしたいことなら、今日はなんでもしてあげる」
恥ずかしがりの智美がここまで言ってくれるのは滅多にないことだ。
ここへきてようやく、智美も俺と離れるのが寂しいんだと思い至る。
とすると、夕食の時の態度は俺を思って我慢してくれていたのだろうか。
そう思うと心が愛おしさでいっぱいになる。
「無理しなくていいよ。智美の嫌がることなんて、俺はしたくないから」
「伸吾……」
再び唇を重ねる。
本当は早く寝ないといけないのだけど、2人の夜はまだまだ長くなりそうだった。



300 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:16:11.92 ID:yAOhGlis
【妻視点】

伸吾が出張へ発つ朝。
拍子抜けするほど、伸吾はいつも通りだった。
もし朝から襲いかかられても、今日だけは身を任せるつもりだったのに。
そのせいでちょっとくらい仕事に遅れても――
なんて思ってしまうのは、一般に言う「爛れている」というやつなのだろうか。
「それじゃあね。夜になったら電話するよ」
「ええ。いってらっしゃい。気をつけて」
玄関先でいつも通りに唇を重ねる。
今日は少し特別なキスを期待していたのに、いつもと何も変わらず、
ごく軽く唇を触れ合わせただけで伸吾は離れていってしまった。
ドアの向こうにその姿が消えてしまって、少しの不安と不満が残る。
いい加減に、伸吾も分かってくれてもいいのに。
私がどれくらい伸吾のことを愛しているのかを。


301 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:16:27.07 ID:yAOhGlis
予想していた通り、今日は張り合いのない一日となった。
帰っても伸吾が居ないと分かっているのだから、何を楽しみに働けばいいのか分からない。
「どうかしましたか、トモミ?」
どうやらそれが見た目にも出てしまっていたらしく、ついには社長にそんなことを言われてしまった。
いけない、しゃんとしなければ。

そんなこんなでどうにか仕事を終えて、伸吾の居ない家へと帰る。
2LDKのマンションは、1人で過ごすにはあまりにも広い。
伸吾は約束通りに電話をかけてきてくれた。
今日あったことを報告し合ったりだとか、とりとめのないことを30分ほど話したけど、
それが終わるとまた家の中は静まりかえってしまう。
テレビをつけてみても、ちっとも気は紛れない。
こんなときはさっさと寝てしまうに限る、と、いつもより随分と早い時間からベッドに潜り込んだ。
伸吾の匂いの染みついた布団にくるまって眠れば少しは落ち着くかと思ったけど、
寂しさが余計に募っただけだった。
伸吾、早く帰ってきて。


302 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:16:46.40 ID:yAOhGlis
次の日も同じことの繰り返しだった。
伸吾が居なくても仕事はいつもと何も変わらない。
社長と居る時間のほうが伸吾と話す時間よりも長いというのはある種の異常だと思う。
「昨日にも増して元気がありませんね。体調がよくないのだったら遠慮せずに言って下さい」
ついには社長にそんな心配までされてしまった。
「別にどうもありませんよ」と答えたらそれ以上追求されることはなかったけど、
これでは秘書失格だ。

それにしても社長はよく私のことを見ているのだなと感心させられる。
プライベートを仕事に持ち込むのは、仕事の出来ない女のすることだ。
せめて外に居る間は気持ちを切り替えよう。


303 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:16:59.34 ID:yAOhGlis
昨日の反省を活かして、今日は仕事が終わってから近所のレンタル屋でDVDを借りてきた。
前々から見たかった映画ではあったんだけど――
見始めてすぐに「失敗した」と気がついた。
どうして恋愛ものを借りてきてしまったんだろう。
気が紛れるどころか余計に虚しさが募ってきて、途中でやめてしまった。
時間とお金を無駄にしてしまった徒労感も相まって、もう何もする気力が起こらない。
伸吾との電話をしている間だけは少しだけ心が満たされたけど、
それが終わってしまったら会いたい気持ちが余計に募ってしまう。
何もすることがないので、今日もさっさと寝ることにする。
明日は土曜。
仕事は休みだけど、伸吾は居ない。


304 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:17:13.30 ID:yAOhGlis
思ったより早く仕事が終わったから、予定より早く帰れそうだ――
なんて、そんな喜ばしい報告もなく。
朝にかかってきた電話の内容からすると、
やはり伸吾が帰ってくるのは夜になりそうだ。
ひとまずは伸吾が気持ちよく帰ってこられるように、
自宅の掃除をすることにした。
といってもさほど広いわけでもなく、伸吾も私も日頃からこまめに掃除をするほうだ。
細かいところまで徹底的にやっても午前中のうちに終わってしまった。
さて昼からどうしようとしばらく考えて、会社に出ようと決めた。
急いでやらなければいけない仕事はないけど、細かい雑務は溜まったままだ。
それをやっておけば気は紛れるだろうし、来週は早めに帰れる日が増えるかもしれない。
時間の潰し方としては完璧だ。
手早く支度を済ませて、綺麗に片付いた家をあとにした。


305 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:17:36.85 ID:yAOhGlis
土曜に出勤するのなんて随分と久しぶりだ。
記憶にある範囲では、少なくとも私が1人で秘書をやることになってからは初めてのことだと思う。
先輩秘書が居た頃には、1人だけ休日出勤させるのも申し訳ないのでそれに付き合ったりはしていたのだけど。

社長室の前を通り過ぎようとして、もしかして、と思ってドアをノックしてみた。
案の定、中から「はい」と社長の声が返ってくる。
ドアを開けるといつも通りの柔らかい笑顔に出迎えられた。
「やあトモミ。珍しいね、君が土曜に来るなんて」
「ええ、ちょっと……」
「溜まっている仕事でもあったのかい?」
「……はい」
本当はいつやってもいいような仕事なのだけど、と心の中で付け加えながら、
秘書の癖として社長のデスクをチェックする。
コーヒーカップは置いてあるが、中身が空だ。
「社長、コーヒーをお入れしましょうか?」
「ああ、ありがとう。お願いします」
ありがとう、と口にするときの社長の笑顔は、
いつも浮かべているのとは違って本当に嬉しそうだった。
そんな細かいことに気付くあたり、
なんだかんだで私もこの人のことをよく観察しているのだなあと思う。


306 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:18:04.34 ID:yAOhGlis
そういえばここ数日、伸吾との電話を除けば会話らしい会話をした相手はこの社長だけかもしれない。
そんな親近感と寂しさが相まってか、コーヒーを渡すとき、いつもなら言わない世間話がつい口をついた。
「社長こそ、会社が休みでも毎日出てこられているのですか?」
「ん? いや、そんなことはないんですけどね。ああ、どうもありがとう」
コーヒーを受け取りながら、社長はぽりぽりと首のあたりをかいた。
なんだかこの人らしくない、どこにでも居る普通の青年じみた仕草だ。
「なんせ独り身ですから。家に1人で居てもヒマでね。
 こうして仕事をしているほうがかえって気が楽なんですよ」
みんなが知っている「やり手の社長」とはまた違った一面を垣間見た一言だった。
なんだ、この人も私と同じようなことを考えるんだな――
そんなことを思った、その時だ。


307 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:18:17.98 ID:yAOhGlis
(……えっ?)
とくん、と胸が高鳴った。
確かに美形ではあるけど、特別なものは感じない――
そんなふうに思っていた社長の柔和な表情が、なんだかいつもと違って見える。
おかしい。こんな感情、伸吾以外の男の人に抱くはずがないのに――
「トモミ? どうかしましたか?」
訝しげな社長の声ではっと我に返る。
今、私は何を考えていたのだろう?
「い、いえ。何でもありません。それでは、私は秘書室に居ますので……」
「うん。何かあったら声をかけさせてもらいます」
返事もそこそこに、そそくさと社長室をあとにする。
私は、イケメンなんかになびいたりしない。
そう思っていたのに――
(ごめんね、伸吾)
こんな気の迷いが生まれるのも、きっと伸吾が居ないからだ。
申し訳なさと、早く会いたいという気持ち。
両方が猛烈に募ってきて胸が押しつぶされそうだ。


308 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:18:35.19 ID:yAOhGlis
それから数時間。どうにか気持ちを落ち着けて仕事に集中していたら、ふいに携帯が鳴った。
伸吾からだ。
喜び勇んで通話ボタンを押し、期待を胸に耳へと押し当てる。
『……もしもし』
が、電話越しに聞こえた伸吾の声を耳にした瞬間に分かった。
きっとよくない報せだ。
『ごめん。仕事が長引いてて……帰るのが遅くなりそうなんだ』
半ば予想していたとはいえ、ショックだった。
まだこんな想いを続けないといけないなんて。
「遅くなりそうって……もともと帰りは夜になるって言ってたわよね?」
『うん。だから、その……』
「え。ちょっと待って。まさか今夜も帰って来れないの?」
『……ごめん』
「そんな……」
目の前が真っ暗になった。
夫の帰りが一日遅れたくらいで何を、と世間の妻たちはきっと言うだろう。
でも私にとってこれは紛れもない一大事なのだ。
特に、あんなことがあったあとでは――


309 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:18:51.15 ID:yAOhGlis
「明日のいつぐらいに帰って来れそう?」
『分からない。もしかすると夜になるかも。
 月曜と火曜は代休もらえるらしいけど……』
「それじゃあ意味がないじゃないの。私はいつも通り仕事なのに」
思わず口をついたその台詞は、少しきつい口調になってしまった。
「……ごめんなさい。怒ってるわけじゃないの」
『うん。ホントごめんな、智美。お土産ははずむから』
そんなものは要らない。早くあなたに会いたいの――
素直にそう言えたら少しは楽になるんだと思う。
けどそんなことを言っても伸吾を困らせるだけだと分かっているから。
「うん。楽しみに待ってるわ。無理はしないでね」
結局、私に言えるのはそんなことしかない。
『ありがとう。智美、今はどこに居るの?』
「えっ……今は……ちょっと、外に出てるんだけど」
何故だろう。
「会社に居る」と、とっさには言えなかった。
『そっか。智美も風邪とかひかないようにね。今日も冷え込んでるしさ』
「うん。伸吾こそ――」
そのあと少しだけ話をして、電話は終わった。
私は最後まで本音を言えなくて――
そして最後まで「今会社に居る」とも言えなかった。


310 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:19:16.82 ID:yAOhGlis
沈んだ気持ちで仕事をしているうちに、いつの間にか時刻は6時を回っていた。
そろそろ切り上げよう。
社長は取引先に出かけたまま帰ってきていないが、
好きな時間に帰ってくれていいと言われたので問題はないはずだ。

そんな短い会話を交わすだけでも、社長の顔はやっぱりいつもとは違って見えた。
ああだこうだと騒いでいる同僚達の気持ちが、今なら分かるような気がしてしまう。
本当にどうしてしまったんだろう、私は。
たった数日伸吾に会えないだけでこんなに不安定になるとは思ってもみなかった。
自分で自覚している以上に、私は伸吾に依存しているのかもしれない。

その夜。家に帰った私は、学生時代の女友達に電話をかけた。
岩崎美佳。
付き合いの期間だけなら伸吾よりも長い、私の親友だ。
『おっす智美。久しぶり』
学生時代と何も変わらない、軽い調子の声。
私たちはたっぷり小一時間かけてひとしきりお互いの近況を語り合ったあと、
やっとのことで本題に入った。


311 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:19:44.42 ID:yAOhGlis
『……で? 何か話したいことがあるんでしょ?』
「うん……あのね美佳、変なことを訊くようだけど……」
『だいじょぶ。智美はいつも変だから』
「……ちょっと?」
なんとも失礼なやつだ。
でもこの子に言われるとちっとも嫌味に感じない。
『冗談。で、どうした?』
「うん。あのね……好きな人が居るのに、他の男の人にドキっとしちゃうことって……
 浮気になると思う?」
『へっ……』
美佳は一瞬の間絶句したあと、「ぶぶっ」と吹き出した。
『アンタねえ……それが25歳の人妻が言うことですか』
「え……変かな?」
『あー、まあアンタはろくに恋もしないで結婚しちゃったからなあ』
「恋ならしたわよ」
『高峰君と、ね。他の男は知らないでしょ』
高峰君、というのは伸吾のことだ。つまり今の私の姓でもある。
「……知らなくていい」
『それで今困ってるんでしょうに。いい? 
 他の男にドキっとしたり、ちょっと目を惹かれたりするくらいは普通のことよ。
 気にするほどのことでもない。
 大体、それ言ったらアンタの夫だってアイドルとか見て鼻の下伸ばしたりしてるでしょうに』
「え……してない、かな。智美がこの世で一番だ、っていつも言ってくれるから」
『あー、はいはい、ごちそうさま。まあ高峰君ならそうかもね。
 いいわ。とにかく、アンタが感じたのは別に特別なものでも何でもないの。
 高峰君は明日帰ってくるんでしょ? 
 愛しい旦那様に思いっきり甘えて、さっさと忘れちゃいなさい』
「それでいいのかな?」
『それ以外にどうしろってのよ』
「そっか。……うん、ありがとう。ちょっと気持ちが軽くなった」
『どういたしまして。感謝してるなら今度甘いものでもおごってね』
それから少し美佳と話して、電話を切った。
やっぱりこの子に話してよかった。
随分と気が楽になったと思う。
そのあと伸吾とも電話したけど、昼間に感じた後ろめたさみたいなものはもうなくなっていた。


312 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:20:12.55 ID:yAOhGlis
次の日。
やっぱり伸吾の帰りは夜になるらしい。
掃除は昨日済ませてしまったし、さすがに日曜まで会社に出る気にはならない。
本格的にすることがない。
家に居ても仕方が無いので、買い物にでも出かけることにした。

近くのショッピングモールに行って、1人で服を見繕う。
こうして1人で買い物をするのはいつ以来だろうか。
もしかすると伸吾と付き合い始めてから一度も1人で来たことはなかったかもしれない。
たまにはこういうのもいいな、でもやっぱり少し寂しい――
なんて思いながらぶらぶらと歩いていた、その時だ。
「おや、トモミ?」
聞き慣れた声が聞こえた気がした。
まさか、とは思ったけど、振り向いた先に居たのはやっぱり予想通りの人物だった。
「こんなところで会うなんて。偶然ですね」
「社長! おはようございます」
予想外の遭遇。また気持ちが落ち着かなくなる。


313 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:20:30.95 ID:yAOhGlis
社長のいでたちは普段のスーツ姿とは違う、ブルゾンにニット、下はデニムというラフな服装だ。
その整ったルックスはやっぱりここでも女性客の視線を集めている。
「ああ、いいですよ挨拶なんて。今はプライベートなんですから。
 トモミの私服姿を見るのは初めてですね。とても素敵ですよ」
「……ありがとうございます」
今日の私はワンピースの上からジャケットを羽織っただけのシンプルな服装だ。
これが似合うのが果たしていいのかどうか迷うところだけど、褒められるのは素直に嬉しい。
そう、褒められたら素直に喜べばいい。
それくらいでは裏切りなんかにならない。
昨日美佳と話してようやく私にもそれが分かった。
「社長はこんなところで何を? どなたかへのプレゼントですか?」
だから、こんな台詞もすらりと言える。
今までは潔癖なまでに無駄話をしてこなかった私だけど、
これくらいはむしろ仕事をスムーズに進めるための潤滑油としてあったほうがいい。
「いえ、いわゆる市場調査というやつで。今どんなものが若い女性に人気なのかを見に来たんですよ」
「なるほど……」
この人もつくづく仕事熱心だ。
この熱心さこそが、この若さで成功を収めた秘訣なのだろう。
「さて、立ち話もなんですし……」
「あ、はい。それじゃあ失礼します」
「ああ、いや――」
立ち去ろうとした私を手で制して、社長は袖をめくって腕時計に目をやる。
たぶん今は12時の少し前くらいだと思うけど――


314 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:20:45.27 ID:yAOhGlis
「ここで会ったのも何かの縁です。ランチをご馳走させてもらえませんか?
 ちょうど近くにお勧めのイタリアン・レストランがあるんですよ」
「え? でも……」
仕事の上で社長と一緒に昼食をとることはある。
でもそれとこれとは別問題だ。今はお互いプライベートなのだから――
「僕はこういう縁を大事にすると決めているんです。
 すみませんが、僕のポリシーに付き合ってはもらえませんか?」
でも、社長の顔を見ていると
“ああ、この人はきっと相手が男の人でもきっと同じ事を言うんだろうな”
と思えてしまって。
気がついたときには「分かりました」と答えてしまっていた。


315 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:20:57.04 ID:yAOhGlis
日曜日のお昼時。
落ち着いた空気の流れる店内に居る客は、やはりカップルや夫婦らしき二人連れがほとんどだ。
そんなところに伸吾以外の男の人と二人で居るというのはやっぱり落ち着けない。
やっぱり断ればよかった。
まだお店に入ったばかりだというのに、私は早くも後悔し始めていた。
「どうしました? やっぱり僕が相手では不満ですか?」
「あ、いえ……」
どうやらそれが顔に出ていたらしく、社長にそんなことを言わせてしまった。
いけない。一旦うけると決めたのだから、せめて社長に嫌な思いはさせないようにしないと。
何よりお金を出してもらうのだから、こんな失礼なことを考えていていいはずがない。
「こういうお店はあまり慣れてなくて。えっと、何を注文すればいいんでしょう?」
「ああ、なら僕に任せて下さい。トモミ、何か食べられないものはありますか?」
「いえ、特には」
「分かりました。それじゃあ……」
社長はウェイターを呼んで、何かをすらすらと注文していく。
あのウェイターには私達がどういう関係に見えているのだろう?
恋人か、夫婦か、愛人か……
少なくとも単なる上司と部下だとは思われていないだろう。
そう思うとますます落ち着かない。

316 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:21:09.90 ID:yAOhGlis
やがて料理が運ばれてきた。
イタリアンというとボリュームがありすぎて私では食べきれないイメージがあったけど、
社長はちゃんとそのあたりも考えてくれていて、
出てきたものを全部食べきってちょうど腹八分目くらいだった。
社長のお勧めというだけあって、味もかなりのものだったと思う。
食べている間、社長は仕事の話しは一切しなかった。
うるさすぎない程度にあれこれと話してくれて――
うぬぼれみたいだけど、たぶん私を楽しませるために工夫してくれたんだと思う。
おかげではじめは強ばっていた私の気持ちもだんだんとほぐれてきて、
食事が終わる頃には自然と笑顔になっていた。
このあたりは伸吾には出来ない芸当だ。
付き合って間もない頃は、二人きりになってもなかなかうまく話せなくて――
なんて、そんなことを思い出しかけて。
それが伸吾と社長を比べているということだと気がついて、慌てて打ち消した。


317 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:21:23.15 ID:yAOhGlis
食後のデザートも終わって、あとは店を出るだけという頃になって。
ふと思い出したように、社長が言ってきた。
「ところでトモミ、どうして今日は一人だったのですか? ご主人はどこに?」
「あ……いえ、実は……」
ここで本当のことなんて言わなければよかったのだと思う。
でも社長の話とおいしい食事ですっかり気持ちがほぐれてしまっていた私は、つい言ってしまった。
「実は今、出張に行ってて……ここ三日ほど家に居ないんです」
まだ夜にはほど遠い時間だ。家に帰っても伸吾は居ない。
そのことを思い出すとまた気分が沈みそうになる。
「そうですか。それは寂しいでしょうね」
「はい……えっ?」
「ん? どうかしましたか?」
「い、いえ。何でもありません」
とっさに目を伏せて取り繕ったけれど、私は気付いてしまった。
そう、“そのことを思い出すと”なのだ。
つまり社長と居る間、確かにはじめのうちは落ち着かなかったけど、
私は寂しさを感じていなかった。
それどころか、家に帰っても伸吾が居ないということすら、
今の今まで忘れていたのだ。
それが何かとんでもないことに思えて、落ち着くために私は水の入ったグラスに手を伸ばした。
「あっ……すみません」
その拍子に、テーブルの上にあった社長の手に触れてしまった。
慌てて引っ込めようとしたら――
それを留めるように、社長の指がそっと私の指先を掴んできた。


318 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:21:40.61 ID:yAOhGlis
「え……」
思わず顔を上げて社長と目を合わせたら、そのブラウンの瞳にひどく真剣な眼差しで見つめ返された。
「僕だったら――」
「しゃ、社長?」
「僕だったら、君みたいな女性が家に居てくれたら、仕事なんて放り出してずっと抱きしめてあげるのに」
社長の言っていることが理解できない。
この人は噂とは違って、仕事一筋の真面目な人で――
「ずっと思っていたんです。君のような女性と一緒に暮らせたらって」
「ま、またまた。社長、若い女性には誰でもそんなこと言っているんでしょう?」
「心外ですね。君がそんな風に言うなんて。僕が女性を口説いているところなんて、君は見たことがありますか?」
「そ、それは……」
確かにその通りだった。
だからこそ私だって今の今まで社長を信頼していたのに――
「トモミ。僕がこんなことを言うのは君にだけです」
指先を掴んでいただけだった社長の指が少しずつ這い上がってくる。
私は手を引っ込めることも出来ず、何かを言い返すことも出来ずに、ただ呆然と社長の瞳を見返していた。
やがて私の手がすっぽりと社長の掌に包まれてしまったとき、ついに決定的な一言が来た。
「好きです、トモミ」
静かな店内で聞かされるその声は、聞き違えようなんてなくて。
なのに、社長はもう一度言った。
「愛しています」
何を思えばいいのか、まるで分からなかった。
ぐるぐると思考が渦を巻いてちっとも定まらない。
一度大きく息をはいて、どきどきと早鐘をうつ胸に手をやって――
そうして胸にあてたのは右手で。
今社長の掌に捕らえられているのが結婚指輪をつけた左手だということに気がついたとき、やっと呪縛が解けた。


319 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:21:56.54 ID:yAOhGlis
「やめてください!」
鋭く言って、勢いよく立ち上がる。
がたん、と大きな音を立てて椅子が後ろに倒れた。
何事かと周りの客がこちらを見ているのが分かったけど、構っている場合じゃなかった。
「私には、伸吾が……夫が居るんです。こういうのは……困ります」
困ります、という言い方で正しかったのかは分からない。
でも「迷惑です」とは言えなかった。
裏切られたとは思わない。
社長を清廉潔白な人だと思っていたのも、
今日だって何の下心もなく誘っているのだと信じていたのも、
私の勝手な思い込みによるものだ。
それでも。
「帰ります。私の分のお金は出しますから――」
「いや。ここは僕が払う」
短くそう言った社長の声は、今までに聞いたことがないくらい強い調子だった。
「お願いです。払わせて下さい。本当は、こんなことを言うために君を誘ったんじゃなかったんです」
何を今さら――と言いそうになったけど、
社長の真剣な表情を見ていたらきっと嘘じゃないのだと思えてしまった。
だから何も言い返すことができなかった。
「……分かりました。社長、こんなことはもうこれっきりにして下さい。
 私も、誰にも言いませんから……」
何故こんなことを言ってしまったのか、自分でも分からない。
こんなのはセクハラだ。
今夜にでも伸吾に泣きついて、しかるべきところに訴え出れば、
社長がどうなるにせよ少なくとも私の転属願いは受理されるだろう。
でも――
伸吾に泣きつく? こんなことを伸吾に話せと言うのか?
無理だ。そんなの、ひどい裏切りだ。
「失礼します」
短く言って、それきり社長のほうには振り向かず、私は足早に店をあとにした。



320 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:22:13.73 ID:yAOhGlis
【夫視点】

「伸吾!」
駅のホームから出ると同時に、待ち焦がれた声が聞こえてきて思わず驚いた。
帰りの時間をメールしたときには、迎えに来るとは言っていなかったのに。
智美はたたっと勢いよくこちらに駆け寄ってきたかと思うと、
なんとそのまま俺の胸に飛び込んできた。
「う、うわっ! 智美?!」
当然、思いっきり周りの視線を集めてしまう。
慌てて離れようとしたけど――
「伸吾、会いたかった……」
俺の胸に顔をくっつけたままそう言った智美の声が涙声になっているのを聞いて、諦めた。
「……ごめん」
さすがに恥ずかしい台詞をこんなところで言うのは憚られるので、それだけ口にして、
そっと智美の頭に手を乗せる。
ちょっとくらい人に見られようが、なんだ。
こんな時に妻を抱きしめてやれないなんて、夫として失格だ。
しばらくそうしていたらようやく智美は落ち着いたらしくて、
名残惜しそうにしながらもそっと離れてくれた。
「ごめんね。なんだか我慢できなくて」
赤らんだ顔で恥ずかしそうに言う智美の姿に、思わず俺のほうこそ我慢できなくなりそうだった。
「いいよ。早く帰ろう」
手を差し出すと、智美はぎゅっとそれを胸に抱き込んでぴたりと体を寄せてきた。
手を繋ぐだけのつもりだったんだけど、まあこれくらいはいいだろう。
智美と腕を組んで歩く帰り道は幸せでもあったけど、いつもの5倍くらい長く感じられた。


321 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:22:26.52 ID:yAOhGlis
「んっ……」
マンションに帰り着いてドアを閉めるなり、靴も脱がないうちから唇を重ねた。
強引で乱暴な、奪うようなキス。それでも智美は一生懸命に応えてくれる。
会えなかった数日の分を取り返すように長く、深く。
お互いの口内をたっぷりとねぶり合ってから、ようやく唇を離した。
「はぁ……」
熱っぽくはいた吐息は、どちらのものだったか。
とろんと蕩けた智美の瞳が間近にある。
「ねえ伸吾、疲れてる……?」
その言葉が何を意味しているのか分からないほど、俺も朴念仁ではないつもりだ。
「バカなこと言うなよ」
言いながら、スカートの中に手を潜り込ませる。
ふとももをゆっくりとなぞって辿り着いたそこは、もう下着の上から分かるくらい湿っていた。
「智美……いつから?」
クロッチにそって指を這わせながら訊くと、どうやら智美は自覚していたらしくて、
元々赤かった頬をさらに紅潮させた。
「あっ……き、訊かないで……お願い……」
その顔と声だけで、3日間溜め込んだものがもう爆発しそうだった。
「ベッドに行くぞ」
半ば強引に智美の手を引いて、俺達は夫婦の寝室へと向かう。


322 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:22:47.29 ID:yAOhGlis
「ああっ!」
お互いの服を脱ぎ捨てて、前戯もそこそこに繋がった。
智美の中は奥まですっかりぬかるんでいて、強引な挿出もスムーズだ。
相手を思いやる気持ちも忘れて、獣のように腰を振り立てる。
「あっ! あっ!」
智美もいつになく乱れている。
3日ほど溜め込んでいたこともあって、激しい交わりも長くは続かない。
あっけないほど早く、一度目の射精が訪れてしまった。
「くっ……」
「あっ……出てる……」
智美の中に深々と挿入したまま、ゴムの中に精液を吐き出す。
ほとんどトランス状態だったからよく分からないけど、たぶん5分ともたなかったと思う。
冷静になってみるとちょっと情けない。


323 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:23:01.59 ID:yAOhGlis
一旦膣から抜いてゴムを外してみたら、中に溜まった白濁液は自分でも呆れるくらいに多かった。
その処理をしていたら、智美が後ろから覆い被さってきた。
「ねえ……」
「うん? ……おっ」
珍しく、智美は自分から俺のものに手を添えてきた。
「ああ……まだ大きい……」
うっとりと言いながら、それを指で包んでゆっくりと上下にこすり上げてくる。
その感触を楽しみながら、俺はちょっとした意地悪をやってみる。
「どうしてほしいんだ?」
「どうって……」
「言ってくれなきゃ分からないな」
「……伸吾の好きにして」
「じゃあこれでやめようかな」
え、と智美は言葉に詰まる。
智美にだって俺がどうしたのかは分かっているだろう。
現にまだ全く萎えないままの逸物をこうやって見せつけているのだから。
でも、たまには智美のほうから求めてくれてもいいと思う。
いつもは「ねえ」としか言わないけど、
たまにははっきりと言わせたいっていうのもまた男心ってもんだろう。
「もう……」
拗ねたような、困ったような声を出す智美。
そんな少女じみた仕草をしながらも、俺のモノをしごく手は止めないのだから、
そのギャップがたまらない。
「私、まだ足りないの……
 お願い……もっと、して……?」
その言葉だけでもう、危うく二回目の射精に達してしまいそうになった。



324 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/16(木) 17:23:28.39 ID:yAOhGlis
【妻視点】

(ああ、気持ちいい……)
自分で思っていた以上に、今夜の私は乱れていた。
伸吾のものを受け入れている、そう思うだけで全身をぞくぞくと快楽が駆け巡る。
全部吹き飛ばして欲しかった。
四日分の寂しさも、今日の昼の出来事も……
「ああっ、伸吾……」
はしたなく声をあげて、愛しい人の胸にすがりつく。
ひどくいやらしいこともたくさん言ってしまった気がする。
構わない。
この人の前ならどんな私にもなれる。
そうして私がいやらしいところを見せると伸吾も喜んでくれるんだから、
躊躇う理由なんて最初からなかったのかもしれない。
伸吾が喜んでくれたら、それがそのまま私の快楽になる。
やっぱり私にはこの人しか居ない。
何度も何度も貫かれながら、私は改めてそう確信するのだった。


333 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:01:58.54 ID:PMApMbzp [2/20]
【夫視点】

あの出張の日以来、智美は随分と積極的に求めてくるようになった。
自分から腰を振ったりなんて以前は恥ずかしがってしなかったのに、
今では自分が上になって快楽を貪っているほどだ。
しっかり者でキャリアウーマンの智美が俺の上に跨がって
裸体を踊らせている姿は非常にクるものがある。
頼めば口でだってしてくれるようになったし俺としては万々歳だ。
相変わらず朝にはさせてくれないけど、この調子ならそれも時間の問題だろう。
雨降って地固まるというやつだろうか。
駅のホームでいきなり抱きつかれたときは驚いたけど、
今ではあれも良い思い出だ。
夜の生活が充実しているおかげで仕事にも張り合いが出る。
そんな動機で働くというのは不純なようだけど男というのはそんなものだと思う。
自分の奥さんに欲情するなんてのはこの上なく健全なことなのだから。





334 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:02:17.90 ID:PMApMbzp
【妻視点】

伸吾が出張から帰ってきてから二ヶ月が経った。
いろいろあったけど最近は少し伸吾の前で素直になれるようになったと思う。
そのきっかけが社長との一件だと思うと何とも複雑な気分だけれど。

「やあおはようトモミ。今日も綺麗だね。最高だよ」
今日も今日とて社長室に入った途端にそんな台詞に出迎えられた。
あれからはっきりとしたアプローチはかけてこないものの、
こうして言葉の端々に艶っぽいものを混ぜてくる。
「はい、おはようございます。今日の予定ですが……」
たぶん無表情を維持することには成功したと思う。
たまに本気でイラっときたり逆にどきりとしてしまったりもするけれど、
そのあしらい方にもいい加減に慣れてきた。
一応転属願いは出してみたのけど、受理はされなかった。
当たり前だ。
人事部が何を言おうとも最終の意志決定権は社長にある。
社長が「秘書を続けろ」と言ったら私達社員はそれに従うしかないのだ。
残る選択肢はこの会社をやめて他に移ることだけだが、
このご時世で今と同じような条件で雇ってくれる転職先が見つかるとは思えない。
結論として私がこの状況に慣れるしかないのだというところに落ち着いた。
なに、決して難しいことではない。
要はあれだ。
中学や高校の時に同じクラスの男の子に告白されて断ったようなものだと思えばいい。
少しは気まずい思いをするかもしれないが、
そのせいでいちいち登校拒否になったり転校したりする子はいないだろう。
みんな普通にやっていることなのだから、私にもやれない道理はない。


335 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:02:32.71 ID:PMApMbzp
「幸せそうですね、トモミ」
コーヒーを渡すときにふと言われた。
相変わらずの柔和な笑顔を浮かべたままだったので真意はよく分からない。
「おかげさまで。主人を愛していますから」
「そう。僕が入り込む隙間はなさそうですね。今のところは」
「永遠にありません」
「そうかな? 少しでも君が隙を見せたら遠慮無く踏み込みますから、そのつもりで」
「はいはい。いいから仕事に取り掛かって下さい」
すげなく言い返して社長室をあとにする。
ここまで言われて我慢するなんて、一般的には変なんじゃないかと思う。
けどこれも伸吾との生活を守るためだ。
なんせ一週間後には三回目の結婚記念日が待っている。
そういう時に少し贅沢できるのはやっぱり共働きならではだろう。
少なくとも子供が出来るまではこれを維持したいと思っている。

ただ、1つだけ気がかりがあるとすれば――
伸吾の主張中にあった社長との一件。
私はまだあれを伸吾に話していない。
何かあったわけでもなく一方的に言われただけなのだから、
無理に言わなくても裏切りにはあたらないかもしれないけれど。
やっぱり何のしこりもなく記念日を迎えるには避けられないことだと思う。
猶予はあと一週間。どうにか折を見て話さなくちゃ――



336 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:02:49.67 ID:PMApMbzp
【夫視点】

ここ数日、智美が何かを話したがっているには気がついていた。
きっとそのうち智美のほうから話してくれるだろうと思って
敢えて触れないでおいたのだけど、一向にその気配がない。
もう結婚記念日は明日だ。
智美の話したいことというのも何かそれに関係してのことなのだろう。
だとすればその機会はもう今夜しかない。
なのに今夜も智美はテーブルの向こうで黙って視線を俯けているだけだ。
「……智美」
彼女がそこまで躊躇うような話というのが何なのか怖くもある。
だけど俺にしてみてもこのまま記念日を迎えたら心から楽しむことが出来ない。
智美が何かを抱えているというのならここで吐き出して欲しい。
「何か言いたいことがあるなら言ってくれ。
 お前のことならなんでも受け入れる自信はあるから」
俺がそう言っても智美はしばらく俺の顔をじっと見たまま黙っていた。
だけど、やがて――
「……うん」
と小さく言って、また俯いた。
そうしてぽつぽつと語りだす。


337 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:03:43.70 ID:PMApMbzp
「あのね……うん。
 余計な前置きをするとまた言いにくくなりそうだから、はっきり言うね」
内気な女の子みたいな語り口調。
智美が弱気になっている時の特徴だ。
「伸吾が出張に行った時のこと、覚えてるよね?」
「ああ、うん。寂しい思いをさせて悪かった」
「ううん。それはいいの。それでね、あの時……
 伸吾が帰ってくる日曜日の朝に、私1人で買い物に行ったの。
 そこで……」
そこで、のあとで智美は一旦言葉を切って、じっと俺のほうを見た。
買い物に行った。そこで何かがあった。
智美が俺に言うのをこれだけ躊躇うような何かが。
何だろう。嫌なものが背筋を伝った気がした。
「社長に会ったの」
智美はそう言った。
社長。智美がそう呼ぶのは1人しかいない。
智美の会社の社長と言えば、雑誌なんかでもよく特集されているイケメンの実業家だ。
そして智美はそんな人の専属秘書をやっている。
その人に会った。日曜日に。買い物中に。プライベートで。
「で、ランチに誘われた」
「……そ、それでついていったのか」
どうにかひねり出した声は半分裏返っていて、それで自分の同様の度合いが知れた。
ランチに誘われて、そこで何があったのか。
俺にとって愉快な話ではないことは明らかだ。
「断り切れなくて。それで、店の中で一緒にご飯を食べて、そしたら……」
「そ、そしたら?」
「……好きだって言われた」
ひゅ、と息を飲む音。たぶん俺のものだったのだと思う。
妻が、智美が、他の男に好きだと言われた。
何を思えばいいのか分からない。
「そ、それで?」
「それでって……私の答えなんて、言うまでもないでしょ?」
智美は視線を落としたまま左手を撫でている。
その薬指で光っているのは、言わずと知れた結婚指輪。


338 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:04:02.23 ID:PMApMbzp
ひとまず頭の中を整理しよう。
まず想定された最悪の自体ではなかった。
そこは安心していい。
今智美が話した内容が全てだったら浮気なんかじゃない。
目くじらを立てるほどのことではないと思う。
だけど――
「なんで、話してくれなかったんだ」
「え……それは、だって……」
「言いにくいのは分かる。でも、一言相談してくれれば……」
「お、怒らないで。私、伸吾に余計な心配をかけたくなくて……」
智美は元々細い型を気の毒なほどにすぼめている。
今にも泣き出しそうだ。
けど、どうしても納得ができない。
「そんなことがあっても、智美は俺に黙って仕事を続けてたんだな」
「……転属願いを出してもダメだったのよ」
「あれからもう2ヶ月だ。智美、分かってるのか?」
「な、何を?」
「俺から見たら……
 自分を好きだと言った男のところに、お前は2ヶ月間も通ってたのか!
 俺に黙って!」
はっ、と智美が息をのんだ。
まるでそのことに今初めて気がついたかのように。
「ち、違うの! 私、そんなつもりじゃ……
 今仕事をやめたら、伸吾に迷惑がかかると思って……」
「迷惑じゃないよ、そんなの。お前1人くらい俺の給料で養えるだろ。
 お前から見た俺ってそんなに情けない男なのか……」
こんなことくらいでここまで取り乱すなんて度量が小さいと我ながら思う。
智美に裏切られたわけじゃない。
けど悲しくなる。
結局のところ、智美は俺のことをちっとも信用してくれていなかったってことじゃないか。
「なんで黙ってたんだよ……
 すぐに言ってくれれば、俺だって怒ったりしなかったのに……」
「……ごめんなさい」
智美の話はこれで終わりのようだった。
どうにもいたたまれなくて、俺は席を立つ。
「……最後に1つだけ。それから今まで、何もなかったんだな?」
「うん。それだけは絶対に」
「なら、もういい。浮気されたとかそこまで酷い話じゃなくてよかった」
俺がくるりと背中を向けると、慌てて智美の声が追いすがってきた。
「し、伸吾? どこ行くの?」
「風呂に入ってくる。今日はソファで寝るから」
「え? で、でも悪いのは私なのに――」
「いいから」
それだけ言い残して俺はバスルームへと向かう。
心の奥底、一番冷静な部分ではちゃんと分かってるんだ。
智美は悪くないって。
全部俺のためを思ってのことだったんだって。
けどそう簡単に割り切れるものでもなくて。
気持ちを入れ替えていつも通りの2人に戻るには、もう少し時間がかかりそうだった。



339 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:04:26.55 ID:PMApMbzp

【妻視点】

話さなければよかった。
眠れぬ夜を過ごしながらそう思う。
伸吾が怒ったのは私のまったく予想していない方向からだった。
彼は私が社長にああ言われたことそのものを怒っているんじゃない。
彼に――これから先ずっと共に歩んでいく一番大切な人に、そのことを黙っていた。
だから彼は怒っているんだ。
どうして私は気付かなかったんだろう。考えてみれば当たり前のことなのに。
結局のところ、私達はまだ本当の意味で夫婦になりきってはいなかったんだと思う。
(伸吾……)
ぎゅ、と毛布を掴んで寂しさと罪悪感に堪え忍ぶ。
リビングで寝ている彼のところへ行って泣きつこう。謝って許しを請おう。
何度そう思ったか分からない。
けどダメだ。そんなことをしたって今の彼は迷惑にしか思わない。
今はただこの孤独に耐えよう。
それがきっと私に与えられた罰なのだ。


340 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:05:05.21 ID:PMApMbzp
明くる朝。
一晩明ければ少しは改善するだろうと思っていた私の考えは甘かった。
伸吾はほとんど口を聞いてくれない。
結局「おはよう」と「いってきます」の二言しか言わずに伸吾は出かけてしまった。
もちろんキスもなしだ。
彼の出て行ったドアの前に立ち尽くして絶望する。
まさか私達はこのまま終わってしまうのだろうか?
「……いや。そんなの絶対いや」
じんわりと目の前の光景がにじんできて、慌てて目元を拭った。
私には泣く資格なんてない。悪いのは私なのだから――


341 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:05:28.04 ID:PMApMbzp
「どうしたんですか? 今日はなんだか元気が無いですね」
案の定、社長は一目で私の心情を見抜いてきた。
もっといろいろ言われるかと思ったけど、
意外にも朝に顔を合わせた時はその一言だけだった。
少しほっとしながら社長室をあとにして事務仕事に移る。
こんな時でも仕事はいつもと変わらない。
それがありがたくもあり、虚しくもあった。

お昼前。ずっと迷っていたけど伸吾にメールを送ることにした。
『今晩のレストランの予約、キャンセルする?』
打ち込んでいて涙が出そうになったけど、どうにか書き上げて送信ボタンを押す。
もしこれで『そうしてくれ』と返ってきたら私はどうすればいいのかもう分からない。

それからいくらか時間が経って夕刻に差し掛かった頃。
メールの返事はまだ来ない。
気付いていないのか、無視されているのか。
前者であってほしいと思うけど、今の私ではそう信じることすら出来ない。
もう仕事もろくに手に付かなかった。
仕方が無い。
ちょうどそろそろ社長室の様子を見に行かなければいけない時間だ。
気分転換がてら、少し話をしてくるのもいいだろう。

社長室のドアをノックするとすぐに返事があった。
中に入って確認事項を事務的に読み上げる。
その間も伸吾の顔が頭の中をちらついて離れない。
携帯は秘書室に置いてある。帰ったらメールの返事が来ているだろうか。
ずっとそんなことを考えていた。


342 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:05:45.96 ID:PMApMbzp
――だから、気がつかなかった。
社長がいつの間にか、私のすぐ側に立っていたことに。
「いけないな」
思いがけず近くからその声が聞こえて、ようやく私の意識が引き戻される。
たぶん、その時にはもう既に手遅れだった。
「言ったはずですよ。隙があれば遠慮なく割り込ませてもらうと」
社長はごく無造作に、まるでそうするのが自然であるかのように、
そっと私の頬に触れた。
伸吾のことばかり考えていたせいか、目の前の光景に頭が追いつかない。
私の頬に他の男が触れている。
伸吾が何度も触れて、でも昨日は触れてくれなかった私の頬に。
頭では理解しているのに体は反応してくれなくて。
その大きさと温かさに思わず身を委ねそうになってしまって――
だから、社長の顔がゆっくりと近付いてきたとき、
かわすことも顔を背けることもできなかった。
「んうっ?!」
唇と唇が重なって、ようやくことの重大さに気付く。
私、キスしてる。
伸吾じゃない男の人と。


343 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:06:11.15 ID:PMApMbzp
「ん! んー!」
もがいてみても、いつのまにか腰と後頭部をがっちりと掴まれていて離れることが出来ない。
その間にも社長は無遠慮に私の唇をついばんでくる。
閉じたままの私の唇と自分のそれを角度を変えながら何度も触れさせ、
食むように挟み、ついには舌でなぞり上げてくる。
(いや……いや!)
毎日重ね合わせてきた伸吾のそれとは明らかに違う、別の男の唇。
違和感しかない。
この人じゃない、と全身が叫んでいる。
なのに逃げることが出来ず、ほとんど私はパニックになっていた。
どれくらいそれが続いただろうか。
やがて満足したのか、社長は忌まわしい抱擁をそっと解いた。
同時に、ほとんど無意識に体が動く。
上司であるはずの男の頬を引っぱたこうと振り上げた手は、しかし――
「おっと。それは困りますね。跡が残ってはこのあとの仕事に差し支えます」
あっさりと社長の手に受け止められた。
悔しいけど男の力には敵わない。
手の届かないところまで下がって、きっと目の前の男を睨み付ける。
「最低……ッ!」
社長の唇にはうっすらと私の口紅の色が残っていた。
そんな名残が無性に悔しくて悲しくて、ぽろぽろと涙が溢れた。
「私、わたし……あの人だけは、裏切りたくなかったのに!」
もう一秒たりともここに居たくなかった。
それだけ言い残して私は社長室を出た。
乱暴に閉めたドアから社長が追ってくることはなかった。


344 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:06:25.79 ID:PMApMbzp
秘書室に戻ると全身の力が抜けた。
デスクに辿り着く前に、がくりと床に膝をついてしまう。
私、とんでもないことをしてしまった――
放心したまま虚空を見上げていた私の視界に、
ふとあるものが映り込む。
私の携帯電話。
着信やメールの受信があったことを報せるランプが灯っている。
よろよろと歩いて行って、縋るような気持ちでそれを手に取った。
来ていたのはメールだった。
差出人は――伸吾から。
『キャンセルはしなくていい。
 もう怒ってないよ。
 今日は2人でゆっくり楽しんで、それでみんな忘れよう』

じんわりと温かいものが胸の内側に広がって――
同時に罪悪感が渦を巻く。
伸吾はこんなにも私を愛してくれているのに、私はそれを裏切ってしまった。
「ごめんなさい……ごめんなさい、伸吾……」
誰も居ない最上階のオフィスで1人、私は涙にくれた。



345 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:06:43.99 ID:PMApMbzp
【夫視点】

智美はちゃんとメールを見てくれただろうか。
今晩もう一度きちんとお互いの気持ちを話し合おう。
それで2人で食事して――
そのあとは気分を変えて久しぶりにどこかのホテルに行くのもいい。
時間をかけてゆっくり愛し合って、それで昨日のことは忘れよう。
今までケンカをしたことがなかったわけじゃないけど、
次の日まで引きずるようなことは今までになかった。
だからきちんと話をして、これからのことを2人で考えよう。
といっても俺は別れる気なんて全くないのだけど――
「おい、高峰」
ふいに呼ばれて、俺の思考は一旦そこでストップする。
顔を上げると、同僚の酷く深刻な面持ちがそこにあった。
「……何かあったのか?」
「何かじゃねえよ。これを見ろ」
同僚が差し出してきたのは一枚の紙。
どうやらどこからか来たファックスのようだが――
「……え。これって――」
差出人はうちの取引先の1つでもある智美の会社。
その繋がりがあって俺が営業を担当している。
そこから来たというファックスの内容を大まかに言うとこうなる。
『前回の発注についてだが、注文の品とは別のものが届いている。
 今日中に無いと困るものなのですぐに手配して欲しい。
 不可である場合、次回から貴社との取り引きは無しにさせて頂く』


346 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:07:00.84 ID:PMApMbzp
――そんなバカな。
読み終えて最初に思ったことがそれだった。
ちゃんと確認はしたのに。
これで間違いございませんね、と先方にも見てもらったはずなのに。
何故こんなことが起こる?
配送業者の手違い? いやそれにしたって――
「理不尽だよな。お前、今までこんなミスしたことなかったのに」
同僚が同情するような目を向けてくる。
それでいて、こいつは暗にこう言っているのだろう。「素直に従うしかない」と。
「くそ……今から手配するったって……」
時刻はもうすぐ5時。
今から手配にとりかかったところで今日中に用意出来るかどうか。
「智美……」
今さら今晩の食事に行けないと言ったらどんなに彼女は悲しむだろう。
何としてでも抜けたい。けど、これでは――
「そうか。お前、今日は結婚記念日だって言ってたっけ。
 けど……」
「分かってるよ」
誰かに代わってもらえばいいという問題ではない。
ウチの課全員が総出で対処にあたって、
それでようやく日付が変わるまでに片付くかという次元だ。
しかも課の職員みんなの手が空いているはずは当然ないわけで。
「……クソッ!」
やつあたりに、がん、とデスクをぶっ叩く。
とにかくやるしかない。
絶望的な気持ちで、俺は作業に取り掛かった――



347 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:07:20.85 ID:PMApMbzp
【妻視点】

6時。
私は社長に挨拶もせずに会社をあとにする。
あれから1人で泣いて、ようやく決心がついた。
この会社をやめよう。
今日伸吾に相談はしてみるけど、
彼が何と言うかはもう決まっているも同然だ。

社長にあんなことをされたことも、
どうするか散々迷ったけど、言ってしまったほうがいいだろう。
本意ではなかったのだと。
その上で伸吾の望むようにしてもらおう。
けどもし彼に捨てられたら私は一体どうなってしまうのか。
きっともう生きていけない。
そう思うとすごく怖いけど、昨晩の一件で私は決めたのだ。
もう彼の前で隠し事はしないと。


348 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:07:48.89 ID:PMApMbzp
一旦家に帰って、レストランに行くための服装に着替える。
再び家を出て目的のビルに着く頃にはちょうどいいくらいの時間になっていた。
伸吾の姿はまだない。
お願い、早く来て――
そう思って待っていても、一向に愛しい人の姿は現れない。
いつの間にか約束の時間を5分過ぎてしまった。
そろそろ連絡してみようか、と思ったちょうどその時携帯が鳴った。
予想通り伸吾からだ。
「もしもし」
出来るだけいつもの調子を意識して平静な声を出す。
「伸吾、今どこ?」
『それが……ごめん、まだ会社なんだ』
「え……」
嫌な予感が駆け巡る。
まさか、来てくれないなんてことは――
『実はさ、お前の――いやそれはいいか』
伸吾は何かを言いかけて途中でやめる。
そんなことはいい。
早く言って。いつ来られるの?
ちょっとくらい遅れてもいいから――
『本当にごめん。今日は無理だ』
「…………」
絶句、というのはまさにこのことを言うのだろう。
言葉が出てこない。
伸吾は他にも何かを言っていたようだけど、耳に入ってこない。


349 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:08:15.50 ID:PMApMbzp
「伸吾……どうして?」
『いや、どうしてって……俺も……』
「私のこと、嫌いになった?」
『違う! そうじゃなくて……』
「そんなに怒らなくてもいいじゃない! 
 私、自分で望んであんなことしたわけじゃないのに!」
思わず声を荒げてしまう。
周りのことになんてまるで意識が向かなかった。
『智美、落ち着いてくれよ。そういうことじゃ……』
「私、伸吾に言わなきゃいけないことがあったのに。
 それを言わないと、私達はダメになっちゃう……ッ!」
もう頭の中がぐちゃぐちゃだった。
昼間の出来事が脳裏に焼き付いて離れない。
伸吾じゃない男の感触がまだありありと唇に残っている。
なのに、伸吾は来てくれない――
『それが何なのか知らないけど、分かってくれよ。
 俺だって仕事なんだから……』
「仕事と私と、どっちが大事なの?!」
ああ――
やってしまった。
一番言ってはいけないことを言ってしまった。
真っ黒な絶望が胸の内に広がっていく。
『智美。それは……』
「ごめん、もう切る。それじゃ」
伸吾が「待て」と言っているのが聞こえたけど、構わずに携帯のボタンを押した。
それと一緒に、私が何より大事にしていたものがぷちんと音を立てて切れた気がした。


350 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:08:28.70 ID:PMApMbzp
何故こうなってしまうのだろう。
伸吾への想いは今も変わらない。
ただひたすらにそれを貫けばいいと思っていた。
だけどそれは違ったのか。
きっと私には彼との生活を維持するために必要不可欠な何かが欠けていた。
かけがえのないものが全て失われてしまって、私は街中で独り、立ち尽くす。
昼間に思ったとおりだ。
伸吾を失った私はもう生きる気力すら沸いてこない。
このまま海にでも身を投げようか。
そんなことすら半ば本気でそんなことを思っていたその時だった。
「トモミ。酷い顔をしていますよ」
一体どこから現れたのか。
いつの間にか社長が私の目の前に立っていた。
「そんなあなたも素敵ですけどね。愛しています」
その言葉が、その笑顔が。
私をこの世界に繋ぎ止める最後の糸。
その時は、そう思ってしまった――



363 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:25:41.12 ID:S3fTl+Ky
【夫視点】

「本当にすみません! ありがとうございます!」
「いいから早く行け」という、
温かいんだか冷たいんだか分からない言葉を背中にうけながら俺はオフィスをあとにする。
なんと今日が俺達の結婚記念日だとしった課のみんなが、
「あとはやっておくから先に帰れ」と言ってくれたのだ。
同僚達には感謝してもしきれない。

「……あれ」
早速智美に電話をかけてみたけど、圏外だった。
電池切れでもしたのか、どこか電波の届かない場所に居るのか。
とにかく待ち合わせ場所に行ってみるしかない。

そうして予約していたレストランのあるビルの前。
智美の姿はどこにも見当たらない。
店のほうにも行ってみたけど、来ていないとのことだった。
仕方ないのでキャンセル料を支払って再び外に出た。
こうなると心当たりは自宅くらいしかない。

けど、自宅に帰ってみても彼女の姿はどこにもなかった。
仕事着のスーツはクローゼットに引っかかっている。
ガレージに車もあったし、一度帰ってきたことは確かなようだ。
そして多分予定通りに待ち合わせ場所へ行って、俺の電話をうけた。
で、そこから先は?
「どこに行ったんだ、智美……」
誰も居ないマンションの部屋で1人、俺は立ち尽くすしかなかった。



364 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:25:59.45 ID:S3fTl+Ky
【妻視点】

誘われるままに、社長とディナーを共にした。
もちろん伸吾と行く予定だった店とは別のところだった。
たぶん値段ももっと高いのだろう。
私はそこでひたすらに胸のうちをぶちまけながら浴びるようにワインを飲んだ。
あなたのせいでこうなったのだ。
社長に向かって何度そう言ったか分からない。
嫌な顔1つせずに社長は私の話に耳を傾けていた。
すっかり酔いが回ってしまっていたので、何を言ったのかはよく覚えていない。
だけど社長が「僕なら君をそんなに悲しませたりはしないのに」と
しきりに言っていたのだけは印象に残っている。

気がついたとき、私は社長の運転する車の助手席に乗せられていた。
どういう経緯でそうなったのかは覚えていない。
自分が眠ってしまっていたらしいこと、頭がまだくらくらとすること。
その2つしか分からない。
「気がつきましたか?」
前を見たまま社長が声をかけてくる。
返事をしようとしたけど、頭にモヤがかかっていて
「ううん……」だとかうめき声みたいなものしか出てこない。
「飲みますか?」
社長が差し出してきた天然水のペットボトルを一も二も無く受け取って、
ふたを開けるなり口をつけた。
冷えた水が喉を通って胃袋に染み渡っていくのを感じて、ようやく少し周りが見えるようになった。
今私が座っているシートは革張りで、足元もうちの車よりずっと広い。
中央にあるカーナビの周りには何なのかよく分からないボタンがたくさんついている。
きっともの凄い高級車なのだろう。


365 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:26:12.75 ID:S3fTl+Ky
ふと気がつく。
そういえばさっき私が受け取ったペットボトルは最初から封が開いていた。
中身も少し減っていたような気がする。
「飲みさしですみません。これしかなかったもので」
今さらながらに社長はそんなことを言う。
「でも今さらでしょう? 僕たちは一度唇を重ねた仲なのですから」
社長に悪びれた様子はない。
何か屈辱的なことを言われた気がするけど、どうでもよかった。
今どこを走っているのだろう?
外を見てみてもよく分からない。
私が通勤で通っている道ではないことだけは確かだ。
眠いわけじゃないけど、私はもう一度目を閉じた。
社長がどこへ向かって車を走らせているのか。
そのことに意識が向くほどには、まだ酔いはさめていなかった。


366 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:26:37.50 ID:S3fTl+Ky
「着きましたよ」
社長の声で再び意識が引き戻される。
眠くないと思ったくせに、また眠ってしまっていたらしい。
窓の外に目を向けると、薄暗い明かりの向こうにコンクリートの壁が見えた。
たぶんどこかの地下だろう。
「……ここは?」
「僕が住んでいるマンションのガレージです。さあ、降りて下さい」
「え、でも……」
頭はさっきよりいくらかはっきりしている。
今ここで社長と一緒に車を降りるのが何を意味するのか、それが分かる程度には。
「私、帰ります」
「ここから? どうやって?
 僕がこの車で君を家まで送り届けたら、いろいろ困ったことになると思うんですが」
「それは……」
確かにそうだ。
もしそんなところを知っている人に――
特に伸吾に見られでもしたら一巻の終わりだ。


367 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:26:58.79 ID:S3fTl+Ky
「だったら、どこか近くの駅に――んうっ?!」
言い終わる前に、唇を唇で塞がれた。
伸吾じゃない男との二回目のキス。
うまく頭が回らずに、されるがままになってしまう。
社長は私の肩をぐいと引き寄せて深々と唇を重ねてくる。
抱擁は昼間ほど強くない。たぶん。私は逃げようと思えば逃げられた。
でもどうにも体がうまく動かずに、社長の胸に手を添えるだけに留まってしまう。
相手からすれば素直に行為を受け入れているとしか思われないだろう。
「ん……ふ……」
唇を閉じるのも間に合わない。。
ぬるりと唾液をまとわりつかせて社長の舌が入り込んで来たとき、その感触にぞくりと背筋が震えた。
たぶん悪寒ではない。じゃあ何なのか。
酔いはさめてきているはずなのに、頭に霞がかかったようにぼうっとしたままだ。
「ん……」
どうにか舌の侵入を押しとどめようとこちらも舌を突き出したら、
見事にそれを絡みとられてしまった。
くちゃ、ぴちゃ。
2人の粘液が絡み合っていやらしい音を立てる。
赤い2つの舌がまるで睦み合う男女のように絡み合う。
見えないはずなのにその様が如実に想像できてしまった。
「あ……はぁ……」
体の芯が熱くなってくる。
熱っぽい吐息はどちらのものか分からない。
(ああ……伸吾……)
世界で一番愛しい人の顔を思い出そうとしたけど、
口の中で動き回る舌のいやらしさにすぐかき消されてしまった。

それがどれくらい続いただろうか。
歯の裏側、舌の付け根。
もう社長の舌が触れなかった部分なんてないくらいにたっぷり私の口内をねぶり回して、
ようやく社長は唇を離した。
「ぷぁっ……」
名残を惜しむように、2人の唇と唇を透明な唾液の糸が結んでいる。
もうごまかしようもなく淫靡な光景だった。
体はいよいよ熱さを増している。
「部屋に行きましょう」
再び社長がそう言ったとき、ついに私は首を横に振ることができなかった――


368 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:27:24.55 ID:S3fTl+Ky
「んっ……」
エレベーターの中でも再び唇を重ねた。
強引にされたわけじゃない。
あそこで頷いてしまった時点で、もう答えは出てしまっているのだ。

ばたん。
マンションのドアが閉まる音は、もう引き返せないという最後通牒だった。
1人暮らしだという社長の自宅は、やっぱり私達が住んでいるマンションなんかとは比べものにならないくらいに広い。
その部屋の中を社長に手を引かれながら素通りして寝室へと向かう。
寝室のベッドも、やっぱり私達二人が寝ているものより大きかった。
あの上で私は今から何をするのか。
分かっているはずなのにうまく頭が回らない。
社長はルームランプはつけずにベッドの側にある間接照明だけを灯した。
薄暗い部屋の中、ベッドの上だけがオレンジの光でぼんやりと照らし出されている。
「あ、あの……」
「さあトモミ」
短く言って、社長はするすると自然に私の服を脱がせていった。
女性の服の構造を知り尽くしているかのようにその動きは滑らかだ。
一体何人の女をこのベッドで抱いたのか。
これから私もそこに加わるのだと思っても、不思議なくらい抵抗感はなかった。
「あっ……」
ついに下着にまで手がかかったとき、
最後の抵抗として私は社長の手を押しとどめようとした。
だけどそんなのは形の上のものでしかない。
「さらけ出しましょう。お互いの全てを」
熱っぽい吐息に混じって耳元で囁かれたその言葉は、
ひどく淫靡に響いて私の脳裏を蕩かしていく。
気がついた時にはブラを外されショーツも足から引き抜かれて、
体を覆うものは何も無くなってしまった。


369 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:27:49.60 ID:S3fTl+Ky
一糸まとわぬ姿となった私を社長は軽々と抱き上げて、すとんとベッドの上に落とした。
上等なベッドが弾力豊かに私の体重を受け止める。
その柔らかさに包まれながら、社長がゆっくりと服を脱ぎ捨てる光景をぼんやりと眺めていた。
やがて社長の裸体が目の前に晒される。
引き締まった胸板にくっきりと分かれた腹筋。
そしてその下では――
(ああ、やだ……)
社長のそれはもうすっかり大きくなって、こちらに突き出すようにしていきり立っている。
見慣れた伸吾のものよりも一回り大きい。エラの部分がゴツゴツと張り出している。
あの部分はカリとというのだと確か伸吾は言ってた。
「どうしました、トモミ。もうこれが欲しいんですか?」
「あ……い、いえ……」
社長の言葉で自分がそれをまじまじと観察してしまったことに気がつく。
カッと顔が熱くなった。
同時に自分が恥ずかしい姿を晒しているのだと急に意識してしまって、
乳房と足の付け根を手で隠しながらきゅっとベッドの上で丸くなった。
「ふふ……かわいいですよ、トモミ」
社長は小さく笑って、そんな私に覆い被さってくる。
縮こまった私の両肩を掴んで上を向かせると、おもむろに唇を重ねてきた。
「んっ……」
三度目のキス。
もう裏切りは決定的だ。
抵抗しないといけないとは思うけど、
同時にもうここまで来たら今さらやめても一緒だという諦念も浮かんでくる。
「ん、ふ……」
車の中でしたのと同じか、それ以上に長い口づけ。
それが終わる頃には、体を隠していたはずの手はいつの間にかベッドに投げ出されていた


370 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:28:07.68 ID:S3fTl+Ky
「きれいですよ、トモミ。想像以上だ」
「ああ……」
伸吾に見せるために磨いてきたはずの、私の体。
それが余すこと無く他の男の視線に晒されている。
羞恥と罪悪感で顔を覆いたくなった。
「さあ、愛し合いましょう」
そんな言葉を伸吾以外の口から聞くなんて、ほんの少し前までは想像したこともなかったのに。
社長は待ってなんてくれなくて、頬に、耳元に、首筋にキスの雨を降らせてくる。
言葉通り、それは「愛し合い」の始まりだった。
「んっ……」
耳たぶをぞろりと舌先で撫で上げられて、きゅっと閉じた口から思わず吐息がもれる。
「トモミは耳が弱いんですか?」
言われてもよく分からない。
他の女の子がどこで感じるのかなんて知らないから。
でも伸吾は私が反応するところを熱心に探して、見つけたら執拗にそこを責めてくるのだ。
そう、今ちょうど社長がしているように。
(私……こんな時に伸吾と比べるなんて最低だ)
罪悪感で胸が押しつぶされそうになる。
そんな私の胸中なんて知りもしない社長は耳への責めを続けてくる。
ゆっくりと耳の形に沿って舌先で嬲り回しながら内へ内へと。
舌による蹂躙は止まらない。
「はぁ……はぁ……」
吐息が熱い。
感じてはいけないはずの感触が体の芯から溢れ出ようとしている。
社長はひとしきり耳を責めて私の反応を楽しんでから、唇を下へと動かしていく。
手で脇腹を撫でながらうなじに唇を這わせ、すうっと背筋に沿って舌を這わせる。
「あっ……」
愛し合うという言葉通り、社長の行為には急性さというものが一切なかった。
そこが伸吾とは違うところだ。
伸吾もいつだって私を感じさせることに苦心してくれるけど、
結局は途中で我慢できなくなって「本番」に移るのだ。
そこが不満でもあり、それ以上に愛おしくもあり――
(私……何を考えて……)
最低だ、と思ったばかりなのに気付けば伸吾のことを思っている。
どれだけ私の中で伸吾の占める割合は大きいのだろう。
なのに今私は違う男の手に抱かれている。
心と体がまるで一致しない。


371 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:28:44.08 ID:S3fTl+Ky
「はぁ……」
そっと吐息を漏らす。
何を思ってみても、体は既に社長の行為を受け入れてしまっていた。

ゆっくりと内側に回ってきた唇が乳房をとらえた。
急いで先端に向かうことはせず、社長はその丸い形に沿ってざらついた舌を這わせてくる。
まるでその形を覚え込もうとするかのように、その行為は執拗に続けられた。
(ああ……やだ……)
いつしか、触れられてもいない先端が固くなってぴんと上を向いていた。
それは紛れもない不貞の快楽の証。
「ふふ……ちゃんと気持ちよくなってくれているんですね。嬉しいですよ、トモミ」
言って、ついに社長はその先端を口に含んだ。
「んっ!」
ぞくぞく、とその感触に体を震わせる。
焦らしに焦らされた上で与えられる性感は強烈だった。
無意識のうちに私の手が社長の頭に添えられている。
それは動きを押しとどめようとしているというよりは、
もっともっととせがんでいるように見えた。

社長はそこに吸い付いたまま舌でころころと転がたり甘噛みしたりと思うままに弄びながら、
もう片方にも手を添えてくる。
ゆっくりと掌で全体をこねくり回す。指で先端を挟んでこすり上げる。
その一つ一つの動きに私の体は面白いように反応してしまう。
「んっ! んっ!」
社長が動くたびにぴくんぴくんと震えてしまう体はごまかしようがない。
でもせめて声だけはあげまい。
そう心に決めて強く唇を引き結ぶ。
「敏感なんだね、トモミ。よく開発されている」
その言葉でまた伸吾の顔が脳裏に浮かんできてしまう。
さほど大きくないはずの私の胸を、彼は最高だと言ってくれる。
彼だって私の胸以外には触れたことなんてないはずなのに――
「ふふ……」
社長が小さく笑う。
私が何を考えているのか見透かしたかのように。
(この人は……)
最低だ。
そう思うのに行為を押しとどめることが出来ない。
心の隙間を満たして欲しいのか、ただ肉体的な快楽を得たいのか。
自分の心が分からない。


372 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:29:18.69 ID:S3fTl+Ky
ひとしきり胸を責めたあと、社長の唇はゆっくりと舌へと向かった。
鎖骨をなぞり、おへその内側まで舌で舐めあげて――
その一つ一つで私をじっくりと昂ぶらせながら、ついにその下にある茂みにまで辿り着いた。
「あ……」
私は小さく顔をあげて、その様をじっと見つめていた。
私の恥ずかしい毛にもキスをして、そのまま下へは向かわずに一度脇道へ。
太股の外側にも唇をひとしきり這わせてから、
社長はおもむろに私の内股に両手を差し入れてくる。
「やっ……」
閉じた足にきゅっと力をこめる。
だけどそんなの、男の力の前ではか弱い抵抗だった。
「君の全てを僕にも見せて下さい」
そう言って社長は私の両足をぐいと押し開いた。
「あぁ……」
羞恥と諦めの吐息。
最も秘すべき場所が暴かれて間近から社長の視線に晒されている。
伸吾以外の男の視線に。
「だ、め……見ないで……」
抵抗は言葉の上でだけ。
すっかり芯から蕩かされてしまった私は、
ベッドの上でくてんと脱力したまま社長の行為に身を委ねてしまっている。
自分のそこがどういう状態になっているかの自覚はあった。
伸吾以外に与えられるはずのなかった感覚にとろかされて、
もう準備なんて必要のないくらいに潤っているだろう。
伸吾ならもう我慢できずに今すぐ本番行為を始めてしまうかもしれない。
だというのに社長はまだそこに触れることすらせず、おもむろに内股へと舌を這わせてくる。
「んっ……」
つつつ、ざらついた舌の感触が内へ内へと向かう。
その視線は私の顔と一番恥ずかしい場所を行ったり来たり。
私を昂ぶらせることの愉悦を楽しむ獣欲に満ちた視線。
そこに愛なんてものは一切存在しない。
やっぱりあの言葉は私を落とすためだけの方便だったのか。
そしてその意図通り、私はこうして社長に抱かれている。
そう思ってみても今さら屈辱感なんて沸いてこない。
胸の内にあるのは罪悪感と、ぽっかりとあいた大きな穴だけ。
決定的な部分へ向かってくる男の舌を押しとどめることは出来なかった。


373 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:30:04.70 ID:S3fTl+Ky
「うぅ……」
ざらついた感触がついにその部分の際まで到達する。
身震いしながら私はそれに耐えた。
半ば予想していた通り、舌はすぐに割れ目の内側へは向かわない。
まるで円を描くようにゆっくりと、まずはその周囲を舐め上げる。
「あ……はっ……」
その部分の下側、お尻のほうを通るときは特別じっくりと舌を這わされた。
たぶん私のそこから溢れ出たものを舐めとっているのだろう。
「んっ……んっ……」
声を殺す。
もう私がすっかり昂ぶっていることは隠しようがない。
だけどそれを自分から認めることだけはしたくなかった。


374 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:30:26.26 ID:S3fTl+Ky
「はぁ……はぁ……」
その円運動は三回ほど続いただろうか。
ようやく舌が離れた時にはもう私は絶頂寸前にまで押し上げられていた。
その部分の周りが社長の唾液と私の分泌物でぬらぬらと光っている光景が、
見えなくても如実に想像できる。
私が息を整えている間にも行為は続く。
その部分に両手の指が添えられたかと思うと、ぐいと左右に引っ張って割り開かれた。
「や、やぁ……」
伸吾の前でもあげないような弱々しい声。
みっともなく左右に引き延ばされた私のそこが
間接照明の淫靡な光で明々と照らし出されている。
いつも真っ暗な中でする伸吾との行為ですら、
こんなことはされたことがないのに。
「可愛らしい穴ですね、トモミ。
 人妻にしては色も随分と綺麗だ」
社長の声はいつもより上ずっている。
彼の目には私の内の内まで、
女が一番守らなければ行けない穴の奥まで見えてしまっているだろう。
「や、やめて下さい……」
あまりの羞恥で私はもう身動きがとれない。
何もされていないのに、視線に晒された穴の内側からまた新たに分泌液が流れ出るのを感じた。


375 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:30:54.56 ID:S3fTl+Ky
「ふふ。焦らしてしまってすみません。
 僕もそろそろ我慢ができなくなってきましたが、1つになる前に一度イかせてあげましょう」
言って、社長はその部分の一番上にある敏感な突起にちょんと舌先で触れてきた。
「んんっ!」
包皮の上から触れられただけなのに、それだけで思わず達してしまいそうになった。
間髪入れず、指で開かれたままのそこに舌が侵入してくる。
複雑な構造をしたそこを丹念にじっくりと、ざらついた舌が舐め上げていく。
「んっ、んっ、んっ」
そこに触れて良いのは伸吾だけ。
そう決めたはずなのに、そこを他の男の舌で嬲られる感触に私は溺れていく。
社長の動きは相変わらずゆっくりだ。
円を描いて私の内側の全てを唾液でべとべとにしながら中心へと向かってくる。
そうしてやがてその穴さえも捕らえられた。
「んっ! んっ!」
留まることを知らないその舌は、無遠慮に穴の内側へ潜り込んでくる。
そこにねっとりとまとわりつくのは唾液か、私の分泌液か。
奥深くに入り込んだ舌は、私の中をちろちろといやらしく舐め上げる。
「んんっ、ンー!」
歯を食いしばってどうにか声を我慢する。
舌の動きは決して早くはない代わりに細かく丹念だ。
思わず腰が跳ね上がり、自分からそこを社長の顔に押しつけるような格好になってしまう。
もう指で押し割るまでもなく開ききったそこから一旦手を離し、
社長は粘度を増した私の分泌液を指ですくい上げる。
そして赤く充血した敏感な突起の包皮を剥くと、指先にまとわりついたそれをその突起へと塗り込んできた。
「んあっ!」
遂に我慢できなくなった声が漏れ出る。
絶頂はもうすぐそこまで来ていた。


376 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:31:17.37 ID:S3fTl+Ky
「いいんですよ、トモミ。いつでもイってください」
一旦そこから口を離して、社長は昂ぶった視線を私の顔へと向けてくる。
口の周りは私の分泌液でべとべとだった。
そうしながら親指と人差し指で私の突起をつまんでころころと転がしてくる。
「あっ! あっ! い、いや……」
「まったく、強情ですねトモミは。そういうところもかわいいですよ」
そう言って社長は再び私のそこに口をつける。
突起を責める指の動きをいよいよ早めながら、
私の中を舌でぐちゃぐちゃにかき混ぜる。
ぴちゃぴちゃぴちゃ。
いやらしい音が異常なほど大きく聞こえる。
「あ、あああっ!」
(伸吾、伸吾、伸吾!)
愛しい人の顔を思い浮かべようとしても、与えられる感触に翻弄されきった頭ではうまくいかない。
せめて声だけは聞かせまいと、私は開いたままだった口を必死に引き結んだ。
そして中に溜まったものを吸い上げるように、社長がそこにきゅうっと強く吸い付いてきたとき。
「ンンンンーーーーッ!」
いつしか添えた手で社長の頭を自分のそこに押しつけながら。
全身をしならせて、私は絶頂に達した。
伸吾以外の男になんて与えられるはずのなかった、めくるめく快楽。
それに身を任せて全身を震わせる。
「あ、あ……伸吾……社長……」
どっちの名前を呼べばいいのか。
絶頂でとばされてしまった意識はいまだにはっきりとしない。


377 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:31:39.57 ID:S3fTl+Ky
社長は私が達したあとも名残を惜しむようにひとしきりそこを舌でなぞったあと、
ようやく口を離した。
見ればその顔には口の周りだけでなく鼻や目元にまで私の分泌液が飛び散っていた。
(ああ、私……)
「まさか潮をふくなんてね。僕の舌がそんなによかったですか?」
「や、やめて下さい……」
分泌液が付着したままの顔でいやらしく嬉しそうに笑う社長を見ていられなくて、
私はベッドの上で丸くなる。
社長はそんな私をぐいと上に向かせて唇を重ねてくる。
さっきまで深々と私の中に入り込んでいた舌が今度は口の中に潜り込んでくる。
夫でない男とここまでしてしまう私は一体なんなのだろう?
自分がひどくいやらしい女に思えてくる。
「ぷあっ……」
キスが終わって自分の舌が空気に晒されたとき、ようやく気付く。
私、自分から舌を絡めていた――
「さあ、トモミ」
ぐ、と社長が腰を密着させてくる。
下腹に熱い感触。
すっかりいきり立った社長のものが私に押しつけられている。
いつの間につけたのか、それは透明なゴムを被せられていた。
(よかった……避妊、してくれるんだ……)
ぼんやりとそんなことを思う。
ゴム無しでなんて伸吾とすらまだしたことがない。
でも、そういう問題じゃない気がする。


378 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:32:02.80 ID:S3fTl+Ky
「あ……」
先端が私の粘膜に触れる。
(私、本当にしちゃうの? 伸吾以外の人と……)
その時、ようやくにしてそこに思い至る。
もう決定的に伸吾を裏切ってしまったと思っていたが、まだ「セックス」そのものはしていない。
引き返すなら今しかない。
「ま、待って社長……」
顔を上げて今まさに結合しようとしているその部分に目を向けると、思わずぎょっとしてしまった。
(あ、あんなに大きいなんて)
最初に見たときはまだまだ最高潮ではなかったのだと思い知らされる。
一回りなんていうものじゃなく、伸吾のそれとは比べものにならない大きさだ。
「や、やめて……そんなの、入らない……」
伸吾のものですら私のあそこにはいっぱいいっぱいなのだ。
あんなのを受け入れてしまったら私が壊れてしまう。
毎日伸吾に抱かれていた頃の私にはきっともう戻れない。
「うん? ここまで来てそれは酷ですよ」
足を閉じようにも既に社長の腰は内側に入り込んでいる。
先端は私の粘膜と触れ合ったままだ。
その密着度のまま、社長はその先端で割れ目の中を上下にゆっくりとこすり上げた。
「やっ、やっ……だめ、待って……」
それが私の入り口に触れるたびに、恐怖とそれ以外の何がでびくんびくんと腰が震えてしまう。
私のそんな反応すら楽しいのか、社長は薄ら笑いを浮かべたまま腰を引こうともしない。


379 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:32:29.29 ID:S3fTl+Ky
そして遂に私の腰を掴んでベッドに押しつけ、ぐっと力強く腰を押し出してくる。
「だ、だめ……ああっ!」
まずカリの部分までが入り込んで来た。
それだけで私がかつて味わったことのないほどの圧迫感と異物感がある。
「だ、ダメ……私……」
「いきますよ」
そして次の瞬間、社長はぐんと勢いよく腰を突き上げた、
「んううううううっ?!」
ずるずるずる。
そんな音が聞こえた気がした。
私の内側の肉を引き摺りながら入り込んで来たそれは、あっという間に最奥に到達する。
「あっ……かっ……」
ずん、と奥を突き上げられた衝撃で一瞬呼吸が詰まる。
ぷは、とようやく息をついてみても膣内に感じるとんでもない熱さと異物感は変わらない、
どころか増す一方だ。
(う、うそ……あんな大きいのが、私の中に……)
信じられない。
それでも私と社長の腰が密着した光景は間違いなくその事実を示していた。
「大丈夫ですか、トモミ」
社長は労るように私の前髪をかき上げて、唇を重ねてくる。
上と下で同時に繋がる。
伸吾以外の男と。
(わ、私……)
ついにやってしまった。
その罪悪感と絶望感が今さらながらにやってくる。
もう伸吾に愛してもらえる体ではなくなってしまった。
今はただこの行為に溺れる以外、私に出来ることはない。


380 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:32:57.99 ID:S3fTl+Ky
社長はキスを続けたまま、ゆっくりと腰を動かし始める。
まだ挿出はしない。
一番奥に入り込んだまま、私の感触を確かめるようにじっくりとかき回される。
「ん……ん……」
繋がった唇から吐息が漏れる。
それだけの動きなのに、私の体は逐一反応して社長を楽しませてしまう。
しばらくそれを続けてから、社長は唇を離す。
「少しは馴染みましたか? さあトモミ。天国へ連れて行ってあげましょう」
ゆっくりと社長のものが外へと向かう。
そして初めて入り込んで来た時と同じように、ずうんと勢いよく奥を突き上げられた。
「あううっ!」
思わず口から飛び出した声は、最初のように苦しげではなかった。
(え……まさか、これって……)
私のあそことは不釣り合いに大きい社長のもので貫かれる感触。
ただの違和感と圧迫感だと思っていたそれの正体に、私はその声で気付いてしまった。
「痛くはないようですね。続けますよ」
「ま、待って……んっ!」
最初の二突きのような急性さはなりを潜め、社長の大きなものが私の中でゆっくりと動き始める。
円を動きながら小刻みに私の中をかき回す。
「あっ、あっ、あっ……だめ、こんなの、だめ……」
やっと分かった。
私はただ心の穴を埋めて欲しかっただけだ。
決して、気持ちよくなんてなりたくないのに――
「何がダメなんですか? いい顔をしていますよ、トモミ」
よっぽど私の中が気持ちいいのか、社長の声はすっかり上ずっている。
それでいて腰の動きに急性さはまるでなく、細かく複雑に、
縦横無尽に私の中を責め抜いてくる。
「んっ、んっ……」
口と目を閉じて私はそれに耐える。
真っ黒に閉ざされた視界の中、私を犯す社長のモノの固さだけがリアルだ。
沸き上がってくる甘い疼きを堪えることが出来ない。


381 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:33:19.72 ID:S3fTl+Ky
「いいんでしょう、トモミ。何故そんなに我慢するのですか?」
「んっ、んっ、それが、ダメ……あっ……なんです……」
私の一番大事な部分を思うままに貫きながら、手で乳房にまで触れてくる。
こねくり回し、先端をつまみ、指先でピンと弾く。
まるでこれは自分のオモチャだと主張するように、社長の動きには遠慮がない。
その動きに合わせて私の乳房がいやらしく形を変える様が、
閉じた視界の先で見えた気がした。
「何がダメなんですか?」
社長は言って、ずん、と私の奥を突き上げる。
「んんっ!」
「ほら、言って下さい」
ずん、ずん、ずん。
続けざまに強く奥を突き上げられて、じいんと体の奥が痺れた。
「んんっ、んんっ……わ、私……気持ちよくなんて、なりたく…………ない……っ」
「どうしてですか?」
「だって……あっ……伸吾以外のもので、感じるなんて……」
そう、今私が受け入れているのは伸吾のものではない。
なのに快楽を感じてしまうなんてあってはいけないのだ。
「なるほど」
面白そうに言って、社長はまた腰の動きをゆったりとしたものに戻した。
強引に突き上げるのではなく、私を昂ぶらせる動きに。
「目を開けて下さい、トモミ」
「い、いや……」
「言うことを聞かないと痛くしますよ」
「そ、そんな……」
酷い、と思うけどまさに今犯されている私は言うこと聞く他にない。
怖々と目を開ける。
男の欲に目をたぎらせた社長の顔が間近にあった。


382 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:33:40.82 ID:S3fTl+Ky
それを目に映した次の瞬間。
「ああっつ?!」
思わず声が跳ね上がった。
私の一番奥の左側。
伸吾が開発した、私の一番感じるところ。
そこを社長のものがずうんと強く突き上げてきたのだ。
「気付かないとでも思いましたか? ここが良いんですね、トモミ」
「や……やめて、そこばっかり……あっ、ああっ!」
そこを発見して、喜び勇んでそこばかり責めてきた伸吾の姿を思い出す。
私が感じると伸吾は喜んでくれる。
伸吾が喜んでくれたら私も嬉しい。
だから私は迷うことなく快楽に身を委ねていられた。
なのに、今目の前に居るのは――
「さあ、目を開いて見て下さい。今君の目の前に居るのは誰ですか?」
「あ、あ、あああっ!」
ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ。
ひっきりなしに溢れる分泌物が濃度を増しているのが分かる。
伸吾のことをいくら思い出してみても、全身を駆け巡る甘い痺れはごまかしようがない。
「今君の中に入っているのは誰のものですか?」
「や、いやぁ……ひどい、こんなの、ひどい……」
社長の責めは激しさを増す。
一番感じるところを何度も何度も突き上げられて、
私は決して昇りたくない高みへと無理やり押し上げられていく。
「くっ……いい締め付けです、トモミ。イきそうなんですね」
敏感に私の変化を感じ取った社長は、私の背中に手を回して抱き上げてきた。
全身が社長の裸体と密着する。
伸吾以外の男と。


383 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:34:03.55 ID:S3fTl+Ky
「あっ、ああっ、いやぁ……こんなの……こんなの……んうっ」
もう声を我慢する力すらなくした唇に社長が吸い付いてくる。
全てを重ね合った男と女。
伸吾との行為を思い起こさせる密着度で社長との行為は続く。
ぐちゃぐちゃに口の中をかき回されながら、
それ以上に激しくあそこを責め立てられる。
「んっ! んっ! んんんんーーっ!」
感じたくないのに。イキたくなんてないのに。
男の体温に全身を包まれて、女としての私が悦んでいる。
我慢に我慢を重ねた絶頂がいよいよ避けられないところまで来ている。
「さあ、僕の腕の中でイキなさい。イクんだ、トモミ!」
いよいよ私の絶頂が近いことを感じ取った社長が唇を離し、
ラストスパートをかけてくる。
「い、いやぁ……イキたくない……イキたくない……!」
長大なペニスによる強烈なストローク。
それが私を追い詰める。
「僕もイクよ、一緒にいこう、トモミ……!」
「やぁっ! あっ! あっ! あっ! ダメ、ダメェ……ッ!」
極限まで興奮した社長の声。
その腕に抱かれながら、私はどうすることも出来なかった。
ずうんと一突きされるごとに脳裏がしびれて何もかもが真っ白になっていく。
(ごめん……ごめんなさい、伸吾……)
流れ出た涙は昂ぶりからか、悲しさからか。
きっと私なんてもう愛してはくれないだろうけど。
愛する人以外のもので押し上げられる絶頂は罪悪感に満ちていた。
「あああっ! もう、だ……め……ッ!」
なのに、気がつけば自分から社長の背中に手を回していて。
伸吾以外の男を受け入れながら私はその時を迎えた。
「あっ! あっ! あっ! ああああああああッ!」
かつてこれほど声を張り上げたことがあっただろうか。
全身を快楽だけが支配する。
「くっ……」
絶頂に打ち震える私の中で、社長も達した。
どろどろに溶かされた意識の中、
何度も跳ね上がって精液を放出する社長のものの感触だけは強烈だった。
(い、いやぁ……)
ゴム越しだというのに、もの凄い量の粘液が放出されているのが如実に分かる。
伸吾以外を男の人を私の膣が気持ちよくして、放出させた。
その事実から逃れたいのに、社長は私の肩を抱え込んだまま離してくれない。
まるで種付けするかのように、びくんびくんとそれが跳ね上がる動きがすっかり収まるまで、
私達は全身をぴたりとくっつけたままだった。


384 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:34:23.16 ID:S3fTl+Ky
「ふぅ……」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
絶頂がおさまると、もう用は済んだとばかりにベッドに投げ出された。
伸吾は行為が終わった後もゆっくり時間をかけてキスをして、
最後には決まって「ありがとう」と言ってくれる。
そして私はとてつもなく満たされた気持ちになるのだ。
(なのに、私……)
こんな愛のかけらもない行為に没頭し、絶頂を極めてしまった。
そのことが持つ意味の大きさを思うと涙が出そうになる。
(伸吾……)
放心状態のなか、ぼんやりと愛する人を想う。
彼は今どうしているだろうか。
時計を見ればもう日付が変わろうとしている。
待ち合わせ場所から消えた私を探してくれただろうか。
もし彼が連絡をくれていたとしても、私は――
「……! そうだ、電話……っ!」
やっとのことでそこに思い至り、部屋を見渡す。
どこに置いたか記憶にはなかったが、私のバックは部屋の片隅でぽいと無造作に投げ捨てられていた。
うまく動かない体を無理やりに動かして、何も身につけないままそこへ歩いて行く。
社長の視線を背中に感じたけど、もう今さらだろう。
バックから取り出した携帯は何故か電源が切れていた。
深くは考えないことにする。
電源をつけて問い合わせをすると、メールが一件きていた。
伸吾からだ。
その内容を読んだとき――
本当の意味で、私は自分のしでかしたことの重大さを思い知った。


385 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:34:39.37 ID:S3fTl+Ky
『智美、どこに居るんだ?
 お前は俺達がダメになると言ったけど、俺はそんなふうに思いたくない。
 お願いだから帰ってきてくれ。俺はお前が居ないと駄目なんだ。
 愛してる』

「あ、あああ……」
なんということをしてしまったのか。
勝手に「もうダメだ」なんて思い込んで、勝手に自暴自棄になって。
もう取り返しがつかない。
こんなにも私を想ってくれる人を裏切ってしまった。
私が誰よりも愛している人を裏切ってしまった。

「ああああああああああああァァァァァッ!!!」

張り上げた声はもはや泣き声ですらなく、絶望の叫び。
自殺なんて比べものにならないほどの過ちを犯してしまった、
取り返しのつかない現実への絶望だった。



386 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:35:01.00 ID:S3fTl+Ky
【夫視点】

ついに日付が変わった。
智美にはまだ連絡すらつかない。
一体どこで何をしているのか。
もう二度とここへは帰ってきてくれないのか。

思い出されるのは「社長」の顔。
智美を好きだと言った、俺なんかでは敵いようもない成功者。
(まさか、な)
どこを比べても「社長」より劣る俺だけど、ただ2つだけは負けていない自信がある。
1つは智美を愛しているという気持ち。
そしてもう1つは、自惚れじゃなしに、智美に愛されているという自覚。
夫であるために必要なものなんてそれで十分じゃないか。
「智美、早く帰ってきてくれ……」
もう何度目になるか分からないその呟きをまた漏らしたとき、
がちゃりと玄関のドアが開く音がした。
「智美――?!」
この部屋の鍵を持っているのは俺の他に彼女しか居ない。
玄関まで走っていくと、果たしてそこに待ち焦がれた愛しい妻の姿があった。
「あ、伸吾! ……っ」
智美は俺を見てこちらに駆け寄ろうとして――
だけど、何故か思い留まったように止まった。
そのまま下を向いて動かない。
「智美? どうしたんだ?」
「だって……あなたに申し訳なくて……」
その声が泣きそうに震えているのに気がついて。
一も二もなく、俺はその肩を抱きしめた。
「え……し、伸吾……?」
「いいんだよ、もう。俺のほうこそ悪かった」
何度も抱きしめた妻の細い体。
温かな温もりが全身に広がっていく。
もう三年も一緒に暮らしてきた仲なんだ。
言葉なんてこれで十分だろう。


387 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:35:20.07 ID:S3fTl+Ky
――いや、一言だけ付け加えるならば。
「愛してるよ」
言ったと同時に、腕の中でこちらを見上げる智美の瞳から涙がじわっと溢れた。
「ほんとうに?」
「な、なんだよ。もう何度も言ってきただろ?」
「まだ私を愛してくれるの?」
「当たり前だ」
言って、唇を重ねようとする。
と、何故か慌てた様子で智美は俺のあごを押し返してきた。
「ま、待って。あの……先にお風呂に入らせて」
「え……なんでだよ。キスくらい良いだろ?」
「そうだけど……えっと……ほら、伸吾ってキスしたら我慢できなくなるでしょ?」
「え、そうかな……?」
それは時と場合による気がするのだけど。
なんだか智美は不自然に慌てている。
「お、お願い。ね? いいでしょ?」
「うーん、分かったよ……」
仕方なく抱擁を解く。同時に智美は慌てて着替えの置いてある部屋へと入っていった。
その時だ。
(……え?)
ふんわりと、嗅ぎ慣れない香りが漂ってきた。
(なんだこれ、香水?)
ほんの一瞬のことだったのでよく分からない。
でも多分高級な香水の匂いだったと思う。
(あいつ、こんなのつけてたっけ?)
なんだか似合わない気がする。
香水になんてあまり詳しくないからよく分からないけど、少なくとも女性的な香りではなかった。
(……ま、いっか)
いちいち妻の趣味に口を出すのは良き夫のすることではない。
そう思って思考を打ち切った、つもりだったのだが――
何かモヤモヤしたしたものは、いつまでも胸の内に留まったままだった。



388 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:35:46.05 ID:S3fTl+Ky
【妻視点】

伸吾に抱かれるのが嫌だったわけじゃない。
そんなのは可能性としてあり得ない。
ただ、伸吾を汚したくなかったから。
社長の体液にまみれた私に触れて欲しくなかったから。
どうしてもお風呂に入らないわけにはいかなかった。

全身を鏡に映してみる。
どこにも跡は残っていない。
私から言わなければバレる心配ははいだろう。
いつかは言わなければいけないと思う。
けどそれは今じゃない。
今はただ黙って伸吾に従おう。

お風呂から上がった私は、何も身につけないまま一も二もなく伸吾の腕に飛び込んだ。
あんなことがあったすぐ後で夫に抱かれる私は厚顔無恥なのかもしれない。
だけど伸吾が求めてくれるなら私はいつだって応える。
たとえ心が痛くても。


389 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:36:05.60 ID:S3fTl+Ky
本番行為に移る前。
伸吾がいつも通りゴムを取り出したけど、私はそれをそっと押しとどめた。
「……智美?」
「いいよ、付けなくても」
「え、でも……いいのか? お前、仕事が……」
「やめるわ」
「えっ」
「明日辞表を出してこようと思ってる」
伸吾は大いに驚いていたけど、すぐにふっと力を抜いて笑ってくれた。
「そっか。智美がそう決めたんなら俺は反対しないよ」
「……ありがとう」
伸吾ならそう言ってくれると信じていた。
あんなことがあって、秘書の仕事なんて続けられるはずがない。
「よし。俺も頑張らなくちゃな」
伸吾が小さくガッツポーズを作っているのを見て、思わずほほえましくなってしまう。
「やだ。頑張るってなにを?」
「え、仕事だよ。智美、何を想像したんだ?」
「もう……」


390 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:36:23.21 ID:S3fTl+Ky
そんな気の抜けたやり取りをいくらかしたあと、もう一度準備をしてその時を迎えた。
「いくよ、智美」
「きて、伸吾」
自分から股を開いて伸吾を迎え入れる。
そしてゴムのついていない生の伸吾が私のあそこを押し開いて入って来た瞬間、思わず驚いてしまった。
「え……」
だけど、思わず声をもらしたのは伸吾のほう。
もしかして――
「ゴムをつけないだけで、こんなに違うなんて」
「伸吾も?」
「も、ってことは、もしかして智美も?」
「……うん」
ちょっと恥ずかしいけど素直に頷く。
まさかこんなに違うなんて想像もしていないかった。
「伸吾と1つになってるっていう感じがして、すごく幸せ」
「うん、俺も」
短いキスのあとに伸吾が動き始めたとき、私は確信した。
男は大きいほうがいい。経験が多いほうがいい。
そんなのは単なる下世話な噂話でしかないんだ。
愛する人と1つになる。
これ以上に幸せで気持ちのいいことなんて他にあるはずがない。
「あっ! あっ! あっ!」
あられもない声をあげて、伸吾の責めを受け止める。
いつもと同じやり方、同じ動き方。
でも全然違った。
嘘みたいに早く私達は上り詰めていく。
「く、出る……」
「出して、中に……あああああっ!」
私の中で伸吾が弾けたとき、私の意識も弾けた。
「あ、熱い……」
どろどろとした精液が私の中を満たしていく。
それでとんでもなく幸せな気分になるなんて、
実は私ってすごく淫乱なのかもしれない。
でも伸吾の前でだけでなら、いくらでも淫乱になったって構わない。

「あの、まだいいかな?」
残らず放出したあと、伸吾がぽつりと言う。
「え、でも抜かずになんて……」
「ごめん。あまりにも気持ちよすぎてさ」
嬉しくなる。私の中が伸吾をそんなにも悦ばせているなんて。
「いいよ。いくらでも、して……?」
意図的に艶っぽさを含んでそう言うと、
伸吾は覿面に色めき立って腰を振り立ててきた。

結局そのあと4回もしてしまった。
私も数え切れないくらいイった。
半狂乱で伸吾に責め立てられながら私は実感する。
ああ、また伸吾のものにしてもらえたのだ、と。



411 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 01:55:47.76 ID:uKV5HOtC [4/25]
【夫視点】

今日、智美は辞表を出しに行った。
これで全てが終わるはずだ。
昨晩、連絡の取れなかった間に智美はどこへ行っていたのか。
それはまだ聞けていない。
もしあの「社長」のところに居たのだとすると――
いや、やめておこう。
根拠もなく疑ったら智美がかわいそうだ。

ともかく今日は人事部に辞表を出しに行くだけ。
何かが起こるはずはない。
そう思い直して俺は仕事に没頭した。


412 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 01:56:12.98 ID:uKV5HOtC
「随分といきなりだなあ」

やはり人事部にはいい顔をされなかった。
それはそうだろう。
辞めると言っても普通は「明日から来ません」では通らないし、
何より辞表というのは直属の上司に提出するものだ。
いきなり人事部に持ち込むなんて前代未聞だろう。
とにかく「社長には会えない理由がある」とゴリ押しして強引に預かってもらった。
「私物は持って帰ってくれよ」
投げやりにそうとだけ言われたけど、予想の範疇だ。
社長の予定なら把握している。
今日この時間は取引先との会談に出かけているはずだ。

ただ、去り際に人事部の人がなんだか気になることを言っていた。
「あ、でも今日は……
 ん? いや、いいのか。なるほど専属秘書だから特別にということかな」
何のことだかよく分からない。
気にしないことにしてエレベーターに乗り込んだ。


413 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 01:56:36.20 ID:uKV5HOtC
最上階。
もう二度と来たくないと思っていたこのフロアも、
今日で最後だと思うと感慨深いものがある。
社長室を素通りして秘書室へと向かい、手早く荷物をまとめ始める。
さすがに2年以上も過ごして居るといろいろ私物がたまっているなあ、なんて呑気に思っていた、その時。
きい、と小さく音を立てて秘書室のドアが開いた。
はじめ、人事部の人が様子を見に来たのかと思った。
でも振り返った私の視界に映り込んだその人影は――
「――?!」
一瞬、声が出なかった。
ドアからデスクまでたっぷり3メートルは離れているのに、
まるで刃物でも突きつけられたかのように私はよろよろと後ずさってしまう。
そんな。何故ここに居るんだ。
「ひどいな。そんなに怖がらなくてもいいじゃないですか」
その人――
社長はまるで昨晩の出来事なんてなかったかのようにいつも通りの笑みを浮かべている。
それがかえって怖かった。
「そろそろ来る頃だと思っていましたよ、トモミ」
「こ、来ないで!」
社長が一歩こっちに踏み出したところで、たまらず叫んだ。
大仰な仕草で社長は肩をすくめる。
「ひどいな。まるで僕が無理やりに君をものにしようとしてるみたいじゃないですか」
「し、したじゃないですか。昨日……」
自分の言葉で昨晩のことが思い出されてしまって、かあっと顔が熱くなる。
「あれは合意の上でしたよ。そうでしょう?」
「そ、それは……」
反論できない。
後悔はしている。これ以上ないほどに。
でもあれが本当に無理やりだったのなら警察に駆け込めばいい。
伸吾だって「レイプされた」と言えば分かってくれる……と思う。
だけどそれができないのは――
「しゃ、社長。どうしてここに居るんですか? 仕事は?」
無理やりに話の方向を変える。
何を思ってか、ふふ、と社長は笑った。
「今日の予定は全てキャンセルしました」
「なっ……」
「出来るんですよ。僕くらいの立場になるとね。
 本当なら面倒な雑務なんて全て部下に任せて、
 僕は年中バカンスにでも出かけて悠々自適に暮らしていてもいいくらいなんだ」
その言葉がどのくらい真実なのか私には分からない。
だけど事実として社長は私の目の前に居る。
「け、けど社長はいつもきちんと仕事をしているじゃありませんか。
 どうして今日に限ってそんなことを……」
「分かりませんか?」
ゆっくりと社長が近付いてくる。
今度は逃げることが出来なかった。
社長の目がひどく真剣だったから。
そう、あの時――昼下がりのレストランで初めて「愛している」と言われたときと同じように。


414 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 01:57:19.32 ID:uKV5HOtC
「君を待っていたんですよ」
視線を逸らせない。
まるで魔法にでもかかったかのように私はその場から動けなかった。
何故私が社長を恐れたのかが分かった。
社長のことは怖かったわけじゃない。「あること」を理解したくなかっただけのだ。
でも――
「愛しています」
そう言われた時、理解できてしまった。
何故昨日、あんな簡単に社長の言いなりになってしまったのか。
あの日から2ヶ月の間に、私は心のどこかでこの人の想いを受け入れてしまっていたから。
何故あんなにも丹念に抱かれたのに「愛がない」なんてしきりに思ったのか。
それを認めたくなかったから。
私を愛している人に抱かれて、感じてしまったのだと認めたくなかったから。
欲望だけで犯されているのだと自分に言い聞かせていたのだ。
「んっ……」
重ねられる唇。
どうしても拒めなかった。
私ってこんなに意志の弱い女だったのか。
25年生きてきて、今初めて思い知らされた。


415 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 01:57:37.06 ID:uKV5HOtC
腰に回された手がそっと降りてきて、スカートの上からお尻を撫で回す。
伸吾がそうしたがっていると知っていて、でも今までさせてこなかった行為。
ちくりと罪悪感が胸を刺した。
「……昨日、夫に抱かれました」
キスをやめて、私は顔を小さく背ける。
社長と見つめ合ったままだと何かが壊れてしまう気がした。
「ほう、あのあとで? それはまた随分と大胆なことをしましたね」
さすがに少し驚いた様子で社長は嘆息する。
その間にも手は無遠慮に私のお尻に添えられたままだ。
「夫から求められたので……」
「ふうん。それで?」
「……あなたより、よかったです」
嘘偽りのない本心からの気持ち。
繋がる快楽も心を満たす幸福感も、社長に与えられたものとはまるで違った。
「へえ。それで君はご主人……たしかシンゴと言ったかな? 彼のほうを選ぶのですか。
 彼とのセックスのほうが気持ちいいからという理由で」
社長の口から彼の名前を聞くのは私をひどく落ち着かない気分にさせた。
どうしようもなく狼狽しながらどうにか口を動かす。
「そ、そういうわけじゃ……
 でも私が愛しているのは彼なんです。
 だから彼に抱かれると幸せなんです」
「それはどうかな」
社長は自信たっぷりに私の言葉を否定する。
「昨夜はちょっと卑怯だったというのは認めましょう。
 でも、ならどうして今も僕にキスを許したのです?」
「そ、それは……」
どうしてだろう。
自分でも分からない。
「こっちを見て下さい」
あごを掴まれて強引に前を向かされる。
おずおずと視線を戻すと、真剣なブラウンの瞳に間近から捕らえられた。
透き通ったガラス玉みたいなそこに私の姿が映っているのがはっきりと分かる。
――ダメだ。
次に何を言われるか、たぶん私には分かっていた。
そしてそれを拒めないという確信もまた同時に芽生えていた。
「トモミ。君が欲しい」
(ああ……)
透き通った瞳に捕らえられたまま求められて、意識が溶けていく。
「で、でも……」
よく分からないまま口から漏れるのは、形の上での拒絶だけ。
どうして拒絶しないといけないのかもよく分からない。
「比べてみればいい。僕と彼のどっちが君にふさわしいか」
比べる。
何より罪悪感を感じていたそのことを、この人は認めてくれるという。
「昨夜のことがどうしても忘れられないんです。
 もう一度だけ僕にチャンスを下さい」
私は――
無意識なんかではなくて。
はっきりと自分の意志で、こくりと首を頷かせた。



416 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 01:58:08.21 ID:uKV5HOtC
【夫視点】

朝一番の仕事が終わって一休み。
智美は今頃どうしているだろう?
辞表を提出するだけだったらそろそろ家に帰っているころだろうか。
いつもなら、仕事中に智美の顔を思い出すのはこれ以上に楽しいことだ。
でも今日は何だか妙にひっかかる。
もしかすると、帰ってきたばかりの智美を抱きしめたときに感じたあの香りのせいかもしれない。
どうしても気になって、気がついた時にはメールを送っていた。
『今どうしてる?』
簡単すぎる文面。
これだけできっと智美は俺の気持ちまで分かってくれるはず。
そう信じて俺は仕事を再開した



418 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 01:58:26.04 ID:uKV5HOtC
【妻視点】

「あっ、あっ、あっ」
社長室に場所を移して、私は立ったまま体中をまさぐられた。
ずっとこうしたかった。君の後ろ姿はあまりに魅力的だから――
そう耳元で囁かれながらこれでもかというほどお尻を撫で回され、
ジャケットすら着たままブラウスの胸の部分だけを開かれて散々に乳房を揉みしだかれた。
社長が伸吾と同じことを考えていたことには少なからず驚いた。
そして社長は伸吾よりも先にそれを実行に移した。
さらに今はスカートを腰の上までまくり上げられ、後ろから抱きすくめられて、
黒いストッキングも履いたまま、下着の中に社長の手の侵入を許している。
「あっ、あっ、社長……」
昨日は単に「他の男」としか意識していなかった、
でも今は「愛している」と私に言った人だとはっきり分かっている、
そんな人に下着の中で指を入れられて私は腰を震わせた。
「はぁ……はぁ……」
秘すべき穴を辱められる快楽に打ち震えながら、
信じられないことに私は伸吾にメールの返事を打っていた。
『まだ会社。私物の整理をしてる』
うまく指が動かずに、ひどく簡素な内容になる。
少し迷ってから、こう付け足すことにした。
『愛してるわ、伸吾』
「あっ! あっ!」
私が何を打ったのか見えたのだろう。
その瞬間、社長の指が激しさを増した。
「いけない人だな、君は」
「う、うそは……言って、ません……あっ」
「でも彼は君がこんなことを僕としているなんて知らない。そうでしょう?」
「あっ……当たり前、です」
社長はたぶん嫉妬している。
私なんかとは別次元の人だと思っていたあの社長が。
それを嬉しく思ってしまう自分を否定できない。
「あっ……はぁ……」
くちゅくちゅくちゅ。
差し入れられた指の動きに合わせてストッキングがぐにぐにと形を変えている。
そこから与えられる甘い感触を否定することができない。
「愛している」と私に言った人に昂ぶらされることに悦びを感じてしまう。


419 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 01:58:57.43 ID:uKV5HOtC
伸吾からの返事はすぐに来た。
『俺も愛してるよ』
たぶん不自然な文面に見えたはずの私からのメールを見て、彼はどう思ったのだろう。
何も訊かずに私の望む返事をくれた彼の想いに心が満たされた、そのときだ。
「愛してるよ、トモミ」
耳元で優しく囁かれた。
その瞬間――
「あっ?! や、うそ……だめ……イク……あああっ!」
激しくされたわけでもないのに、突如として私は達してしまった。
それも軽くではなく、かなり深く。
「あ……あぁ……」
びくん、びくんと痙攣を繰り返す私の体を、社長は後ろから優しく抱きしめる。
「ん……」
唇を重ねるのも、もう何度目になるだろうか。
入り込んでくる舌の動きにこちらからも応えてしまう。
長い間深々と唇を重ね合って、私は絶頂の余韻に浸った。


420 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 01:59:29.80 ID:uKV5HOtC
「昨日はすみませんでした。あんな状態の君に愉しんでもらうにはああするのが一番だと思ったんです」
私が絶頂から醒めきる頃を見計らって、社長はそんなことを言った。
昨日の行為。
決して流されまいとして、でも流されることを強要された記憶。
「……正直言って、辛かったです」
「でしょうね。本当にすみませんでした」
私の頭を優しく撫でながら、穏やかな声で社長は言う。
「あんなのは愛し合う行為じゃない。だから……もう一度僕に頂けませんか?」
迷う仕草は、素振りだけ。こくん、と私は社長の腕の中で頷く。
「よかった。じゃあそこのデスクに手をついて、お尻をこちらに向けてくれるかい?」
社長が指さしたのは、自分の指定席である社長のデスクだった。
「え、でも……」
言われた通りにする自分の姿を想像して、かあっと顔が熱くなった。
それはなんていやらしい光景だろう。
でも。
「お願いします。トモミ」
「……分かりました」
重ねて言われると、私は断ることが出来なかった。
ふらりと歩いて行って、言われた通りにデスクに手をつく。
「もっとお尻を高く上げるんだ」
「……こ、こうですか?」
伸吾にも見せたことがないような、とんでもなくいやらしい格好を社長の目の前で晒している。
なのに私はどこまでも従順だった。
ストッキングに包まれたお尻と、すっかり濡れそぼって愛液を垂れ流すそこにまじまじと社長の視線が注がれるのを感じても、
私は動くことができなかった。
「すごくいやらしいよ、トモミ」
うわずった社長の声が聞こえる。
(ああ……ごめんね、伸吾……)
伸吾への後ろめたさが消えたわけではない。
なのに自分がこうすることで社長が喜んでいると思うと私も嬉しくなってしまう。
ゆっくりと近付いてきた社長はすうっと私の股間からお尻を指先でなぞってから、
ストッキングと下着をまとめてずるりと押し下げた。
熱くなって蒸れていたそこに外気があたる。
そのひやりとした感触すら、今の私には体を昂ぶらせる刺激の1つだ。
「あ……ああ……恥ずかしすぎます、社長……」
「すぐに忘れさせてあげますよ。少しの辛抱です」
言って、社長は垂れ落ちた愛液で濡れた私の内股から足の付け根までをゆっくりと撫で上げる。
「下着がすっかり汚れてしまいましたね。こんなのをご主人が見たらばれてしまうんじゃないですか?」
「どうせ私が洗濯するから大丈夫です……だから……」
だから、何なのか。
その意味するところを言った後から理解しても、沸き上がってきたのは羞恥だけだった。
相手が社長だと、愛していると言ってくれた人だと意識するだけでこんなに自分が変わってしまうなんて。
伸吾への愛は今も変わらない。
でもそれとは別のところで、社長を受け入れ始めている自分を感じていた。


421 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 02:00:10.33 ID:uKV5HOtC
「さあ、行きますよ」
いつのまにかズボンから取り出されていたそれが私の秘所に密着する。
ゴムの被さっていない、生のペニスが。
「しゃ、社長……」
「昨日の僕に抱かれたのが、君の人生で一番気持ちのいいセックスだった。そうだね?」
少しでも腰を押し出せば入ってしまうという位置で止まったまま、社長はそんなことを言う。
「それは……」
「どうなんですか?」
「……はい。悲しかったけど、よかったです。でも……」
「そのあとでご主人に抱かれたときのほうが気持ちよかった?」
少し恥ずかしいけど、迷わずに頷いた。
意地なんかじゃない。
昨日伸吾に抱かれたときは自分でもびっくりするくらい乱れてしまった。
「君のところは結婚してもう3年だったかな?
 それで子供がまだだということは、今までゴムをつけてしていたのですか?」
「それは……」
夫婦の秘め事を他人に聞かせることは、伸吾と共有する秘密が減るみたいで抵抗がある。
でもこの人の前で嘘はつきたくなかった。
「はい。今まではつけてました」
「でも昨日はつけなかった。それでものすごく気持ちよかった。そうだね?」
「……はい」
ふふ、と社長は嬉しそうに笑う。
「世の中にはゴムをつけてもつけなくても変わらないという女性と、
 著しく変わるという女性が居ます。どうやら君は後者のようだ」
ぐ、と社長のそれが押し出される。
生のままの先端が私の中にぐいとめり込んだ。
(ああ……だめ、なのに……)
いくらなんでもこれだけは許してはいけない。
頭では分かっていても、体は動いてくれなかった。
「僕の愛を受け入れて下さい、トモミ」
その言葉と共に、ペニス全体がずぶりと押し込まれた。
「んんんんっー!」
ぞくぞく、と背筋が震える。
この大きさは一回入れられただけで慣れるものではない。
だけど昨日みたく息が詰まるほどの圧迫感はなかった。
ゴムを被っていない生のペニスの熱さが私の中を奥まで満たしている。
「さあトモミ。僕のチンポで気持ちよくなって下さい」
そんな、いやらしい言い方――
なんて思う暇もなく挿出が始まる。
昨日ほどゆっくりでもなく、しかし急性すぎもせず。
小刻みににバックから突き上げられる。
「あっ! あっ! あっ!」
違いはすぐに分かった。
それが出入りするたびに、
ごつごつとしたエラの部分が私の内側の肉をごりごりとひっかく。
その感触のリアルさが昨日とは段違いだ。
「あ、は、ああ、社長、社長……!」
「トモミ……僕の味をたっぷりと覚え込ませてあげますよ」
伸吾のものよりも大きなペニスが私の奥を何度も何度も突き上げる。


422 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 02:00:32.27 ID:uKV5HOtC
「あ、あ、あ、あ、あ」
声なんて我慢できるはずがない。
頭を振り乱しながら、だらしなく開いた口からひっきりなしに声を上げる。
「愛しているよ、トモミ」
反則だ、と思った。
今そんなことを言われたら意識せざるをえない。
私の中に入っているのはこの人のものなのだと。
他の誰でもなく、私を愛してくれる社長のものなのだと。
「ああああっ! 社長……!」
「気持ちいいかい、トモミ」
「あっ、あっ、いいです、すごく、あっ、気持ちいい……!」
伸吾の前以外では言うことのないはずだった台詞。
でもこの人の前ならいいような気がした。
「しゃ、社長は……社長はいいですか、私のなか……」
「ああ、すごくいいよトモミ……
 強くしていいですか?」
「いい、いいです……社長の、好きに……あああああっ!」
ぱん、ぱん、ぱん。
社長の腰と私のお尻が激しくぶつかりあって音を立てる。
激しさを増した突き上げに、私は一気に押し上げられていく。
「社長、社長……私、もう……」
「いくんですか、トモミ。いいですよ、僕ももうすぐだ……!」
愛し合う行為、とまでは言いたくない。
でも私が社長を受け入れているのはもう否定のしようがない事実だった。
「あ、あ、あ……いく、いく……」
ラストスパートの激しい責めにがくがくと揺さぶられながら、うわごとのように口にする。
「いく、いく……ああああああッ!!」
「くっ……」
どくん。
私が達したのと同時に、社長も私の中に欲望の塊を放った。
びゅくんびゅくん。
そんな音すら聞こえると錯覚させられるほど勢いよく、
奥まで入り込んだペニスの先端からそれは何度も何度も放出される。
「ああ……熱い……」
伸吾以外の男に中出しされる。
そのことの意味を今さらながらに考える。
「はぁ……はぁ……」
私の背後で乱れた息を整える社長。
私を愛していると言った彼の精液を私は子宮で受け止めた。
「愛しているよ、トモミ」
そういって社長が再び唇を重ねてきたとき、私は思考を打ち切った。
きっと、これでいいんだ。


423 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 02:00:48.54 ID:uKV5HOtC
【夫視点】

「ふふふ……」

昼休み。
智美から来たメールを見て1人ニヤついていたら、同僚に気味悪がられた。
だってしょうがないじゃないか。
俺はただ様子を訪ねただけだったのに、まさか「愛してる」なんて返ってくるなんて。
やっぱりあいつは俺のことを一途に思ってくれているんだ。
変なことを心配せずに、もっと自信を持とう。
人知れず俺はそう心に決めたのだった。


425 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 02:01:09.89 ID:uKV5HOtC
【妻視点】

「ん、ん、ん……」

社長室備え付けのシャワールーム。
そこに敷かれたビニールマットに全裸の社長が寝そべっている。
そしてやはり全裸の私はその上に乗って、シックスナインの体勢で社長のものを口に銜えていた。
「ああ、とてもいいですよトモミ……」
嬉しそうに言って、社長は私の太股からお尻を撫で上げる。
そこだけでなく私の全身は、ねばついた液体を塗りたくられてどろどろになっている。
セックス用のローションだと社長は言っていた。
精液にも似たそれを乳首やあそこに塗りたくられる感触は私にとって未知のものだった。
その責めで私は呆気なくいってしまって、
その続きとしてこうして社長のものに奉仕している。
「僕のものをくわえて興奮しているんですね、トモミ。
 どんどん溢れてきますよ」
社長からは私のあそこが丸見えだ。
いやらしくそう言ってつるりと割れ目を撫でてから、そっと指を上へと動かす。
その上の窄まりへとそれが触れてきたとき、思わず驚いて口を離してしまった。
「しゃ、社長……そこは……」
「うん? トモミは経験がないのかい?」
そう言いながらも、社長はぐにぐにとそこを指先で揉みほぐしてくる。
「あ、あっ……な、ないですよ……
 社長、ダメ、そんなところ、汚い……」
経験どころか、そこを他人に触れられること自体初めてだ。
ある意味では女性器よりも恥ずかしいところを他人の指で弄くり回されるのはどうにも落ち着かない。
「しゃ、社長……」
「いいんだよトモミ。僕に任せて下さい」
言って、社長はぐいとさらに強く指を押し込んでくる。
「あっ?!」
排泄にも似た異物感。
まさかこれって――
「や、社長……本当に……」
「随分と驚くんだね。ご主人とこっちでしたことはないのですか?」
「そ、それは……知識としては知ってますけど……
 触られたのも初めてで……」
「それはいいことを聞いたな」
嬉しそうに社長が言ったのと同時に、お尻の異物感がぐぐっと奥まで入り込んで来た。
「やぁ……社長……」
「前の初めてを奪ったのは今のご主人かい?」
「……はい。そうです」
「なら僕はこっちの初めてをもらおう。今からその準備をするよ。
 いいですね?」
こっちの返事を待たずに、お尻の異物はゆっくりと出入りを始める。
「ん、ん、んっ……」
ローションのまとわりついた指は、
初めて異物を受け入れる私のそこにもスムーズに出たり入ったりする。
入り込んでくる時には異物感を、出て行くときには開放感を与えながら。
これが快楽なのか何なのかよく分からない。
「さあ、トモミも続けて下さい。もうすぐそれが君のここへ入るんですよ」
言われて、改めて社長の巨大なそれを見つめる。
これが私のお尻に入る?
どうにも現実感がなかった。


426 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 02:01:36.10 ID:uKV5HOtC
でも――
(社長に初めてを奪われる……)
それはなんだかとても甘美な響きで、自然と体が動いた。
私の口には大きすぎるそれを無理やり口の中に導いて、唇をすぼめながら頭を上下させる。
「そうです、トモミ。君のここも少しずつ柔らかくなってきましたよ」
指の出入りが激しくなる。
「ん、ん、んっ」
お尻の穴をほじくられる感触は、やはり快楽なのか何なのかよく分からない。
でもその動きが激しくなるに従って、社長のものに奉仕する私の動きも自然と早さを増した。
やがて口の中でそれはぴくぴくと痙攣を始める。
放出の時が近い。
「くっ……出しますよ、トモミ。飲んで下さい……!」
びゅくん。私の口の中で社長のものが弾ける。
二回目だとは思えないほど勢いよく吐き出されるそれを私は喉で受け止めて、
言われた通りに嚥下していく。
社長のそれは伸吾のものよりもっと粘ついていて味も濃い。でも決して嫌ではなかった。
私が全てを飲み終えたのを見て、社長もようやくお尻から指を引き抜いた。
「意外にあっさりと飲んでくれたね。ご主人のものを飲んだことはあったのですか?」
「……はい、何度かは」
「そうか」
短く言って、社長はするりと私の下から抜け出した。
そうして先ほどと同じように、バックから私を犯す体勢に入る。
だけどその照準となるのはセックスのための穴ではなくて、もう一つの穴。
ぐ、とローションでぬかるんだそこに先端が触れる。
「だけどここは初めてなんだね?」
「はい、そうです」
「よし。トモミ、君の初めてをもらうよ。いいですね?」
「はい……社長。私の初めてをあなたに捧げます」
私の一言が社長を喜ばせたのかどうかは定かではない。
でも私がそう言ったのと同時に、社長はぐんと腰を押し進めてきた。
「あああああっ!」
ぬるん。
ローションの助けもあって、意外なほど呆気なく私のそこは社長のものを飲み込んだ。
「あ、あ……社長……」
「トモミ。僕が君にとって初めての男になったよ」
言って、社長は間髪入れずに挿出を始めた。
「んっ! んっ! んっ!」
思わず体に力が入ってしまう。
痛くはないけど異物感がすごい。
「一度大きく息を吐いてごらん。力を抜いて僕のものを受け入れるんだ」
言われた通りに「はぁっ」と大きく息をはく。
ゆっくりと私が呼吸を整えて全身の力を抜いたのを見計らって、社長は挿出を再開した。
「んっ! は、はぁ……はぁ……」
社長の責めは「処女」の私にも容赦がない。
前に入れたときと同じかそれ以上に激しく社長のものが出入りする。
(あ……わた、し……?)
気がつけば、前の穴から溢れ出た愛液が幾筋も太股を伝っていた。
触れられても居ないそこがきゅうきゅうと窄まっているのが分かる。


427 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 02:01:51.39 ID:uKV5HOtC
「しゃ、社長……私……私……」
「気持ちいいんですね、トモミ」
「あっ、は……いい、みたいです……」
一度自覚してしまえばそこからは早かった。
社長のものが私のお尻を責め立てるその感触は、前で繋がった時とはまるで別種の気持ちよさだ。
「トモミ。これからこっちは僕専用の穴だ。いいですね?」
「あ、はっ、はっ……社長……」
何かとんでもないことを誓わされそうになっている。
なのに私はすっかり社長を受け入れてしまっていて――
「ここを開発できるのも、こうしてここで気持ちよくなれるのも、僕だけだ。いいねトモミ。誓えますか?」
「あっ、あっ、あっ……社長、それ、は……」
腰の奥がじいんと痺れている。もしかしてこれが、お尻の穴で達する絶頂のしるしなのかもしれない。
「誓ってくれ、トモミ……!」
「ああっ! しゃ、社長……!」
どうせ今までも伸吾はそこに触れようとしなかったのだ。
だから大丈夫――
初めての穴を責め立てられ続けた私は、もうそれくらいしか考えられなかった。
「ち、誓います……! こっちの穴は、社長専用です!」
「トモミ……! くっ……!」
「ああああっ! 社長ーーーっ!」
社長がお尻の中で放ったのと同時に、私もお尻で達した。
社長専用と誓ったその穴の中に、どくどくと社長のものが注がれる。
私は初めて味わうお尻での絶頂に打ち震えながら、それをとても愛おしく感じていた――


428 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 02:02:05.60 ID:uKV5HOtC
【夫視点】

そろそろ夕方に差し掛かる時間帯。
いつもこの頃になると智美の顔を思い出す回数が増える。
あんな可愛いことを言ってくれたお礼に、
今日は思いっきり可愛がってやりたい。
そうだ、何か智美の好きな甘いものでも買って帰ろうか。
なにせ明日からはずっと智美が家で俺を待っていてくれるんだ。
それくらいしてもバチは当たらないだろう。
残りの仕事を急いで片付けながら、俺は帰宅の瞬間を心待ちにしていた。


429 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 02:02:21.80 ID:uKV5HOtC
【妻視点】

「ああ、トモミ……!」
「社長……!」

仮眠室のベッドの上。
私達は体面座位で、お互いにしっかりと抱き合って繋がっていた。
社長が貫いているのは前の穴。
もうぐちゃぐちゃになったそこをさらにかき回してくる。
いつしか私も夢中になって自分から腰を振り立てていた。
「あ、ああっ! 気持ち、いい……!」
恥も外聞もなく口にする。
社長はすっがり蕩けた私の目を見つめながら、ついに言った。
「ご主人よりもいいですか?」
「あぁ……それは……」
逡巡しながらも、社長を求める腰の動きは止まらない。
それが何よりも答えを物語っていた。
「言って下さい、トモミ!」
「あっ、あっ……社長……」
セックスを続けながら真剣な目で見つめられる。
そんなことをされて、嘘なんてつけるはずがなかった。
「あ、あ……社長のほうが、いいです……!
 比べものにならないくらい……っ!」
「トモミ!」
社長の責めはさらに勢いを増した。
体と心を重ね合わせる快楽に翻弄されながら。動きを合わせて2人で上り詰めていく。
「ああ、愛しているよトモミ……」
「しゃ、ちょう……わたしも……」
私はついに決定的な一言を言おうとしている。
もう止められない。
繋がり合ったまま交わすその言葉がどれだけ気持ちいいか、私は知っているから。
「私も、好き……です……!」
「トモミ、トモミ!」
「あっ! あっ! 社長、社長!」
絶頂の瞬間、私はぎゅっと社長にしがみついた。
「僕のものになれ、トモミ!」
「ああっ! なります、私……社長のものに……
 あああああああああああっ!」
今までに味わった中でもっとも深い絶頂。
「く、トモミ!」
大きく上半身を反らして震える私の腰をぐいと引き寄せて、
社長は再び私の奥へと子種を吐き出した――


430 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 02:02:36.27 ID:uKV5HOtC
【夫視点】

智美の妊娠が発覚したのはそれから3ヶ月後のことだった。
逆算してみると、どう考えてもあの結婚記念日のあたりが一致する。
いざとなったら子作りってそんな簡単にできてしまうんだなあ、と感心させられてしまった。

そういえばあの時家に帰ってくるまで智美がどこに居たのかはまだ聞けていない。
でもそんなのは些細なことだ。
今の俺はいわゆる幸せの絶頂というやつだと思う。
智美のために、そしてもうすぐ生まれてくる子供のために。
今はただがむしゃらに働こう。


431 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 02:02:50.69 ID:uKV5HOtC
【妻視点】

妊娠している、と聞かされた時にはどうしていいか分からなかった。
この子の種が伸吾なのか、社長なのか。
たぶん検査すれば事前に分かるものなのだろうけど、さすがにそれは憚られる。

結局私はあのまま仕事をやめたけど、社長とは場所を変えて何度か会って、その度に抱かれた。
伸吾を裏切っているという自覚はあるけど、
社長とのセックスは強烈すぎてどうしてもやめられなかった。
今もまだ私の気持ちは伸吾にある。
でも以前のように依存はしていないと思う。
もしこの子が社長の子で、私が伸吾に捨てられたとしても、私は1人で生きていける自信がある。
社長が拾ってくれるならそれでいいし、
そうでないならシングルマザーとしてやっていく覚悟もしている。

伸吾と社長。
私を愛してくれる彼等は、どちらも大事な大事な私の宝物だ。


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最後は社長の子供が生まれて、妻子共に旦那に殺される終わりかたが希望。
子供の骸は社長に送りつける。
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